アナリストにも問題あり! オリンパスの損失隠し相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年11月17日 19時15分 公開
[相場英雄Business Media 誠]

 簡単に証券会社アナリストの仕事をみてみる。日本で活動するアナリストは、公益社団法人・日本証券アナリスト協会が定めた試験を合格した専門家が大半だ。試験を受ける過程では、企業の財務や運用の手法などを詳細に学ぶ。

 証券会社の調査部などで実務経験を積み重ね、「自動車」「銀行」「民生用電機」といったセクター(業種)別の専門家となる向きが多い。また、鉄鋼や流通など実業界での実務経験を生かし、証券界にアナリストとして転身する向きも少なくない。

 アナリストは担当する企業を広範に同業他社と比較し、主力製品の実力や販売動向などを精緻(せいち)に分析。「買い」「中立」「売り」などと独自の格付けを所属する証券会社と自身の名の下に発表する。

 もちろん、アナリストの見解によって株価は動く。それだけに機関投資家向けに発行するリポートには重みがあるわけだ。

 オリンパスに話を戻す。同社についても、筆者が知るだけで10社以上の証券会社がアナリストリポートを発行していた。ただ、残念なことにその大半は「買い」、あるいは「強気」だった(現在は投資判断の中止が大勢)。

 今回のオリンパスの問題は、同社の一部幹部が意図的に損失を隠ぺいした。社外取締役や監査法人の責任も重大であり、担当アナリストだけを批判するのは酷かもしれない。ただ、資産運用の分野では、確実に彼らに対する風当たりが強まっているのだ。

 「ウッドフォード元社長が指摘したように、過去の過大な投資案件をアナリストがチェックできていなかったのか」(国内投信幹部)、「株価の割安・割高ばかりチェックしたリポートばかりで、肝心な財務のリスクが見落とされていた。アナリストの目は節穴なのか」(国内生保)との声は日増しに強まっている。

 もちろん、株式投資は自己責任であり、責任をすべてアナリストに転嫁することはできない。ただ、「数十、数百の銘柄を運用する関係上、アナリストの見解がなければ運用の業務が動かない」(先の投信)ことも事実。オリンパス本体と同様、担当アナリストも信頼回復を急がねばならない立場にあるのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.