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» 2011年11月14日 08時01分 UPDATE

藤田正美の時事日想:金融市場は落ち着いたけど……統一通貨ユーロは維持できるのか? (1/2)

ギリシャの次に債務問題がクローズアップされたイタリア。先週にはイタリア国債の利回りが7%台に上昇したが、欧州中央銀行が懸命に買い支えたとされたことから、6%台半ばまで下落した。統一通貨ユーロは今後どのようになっていくのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉に参加するかどうかで、まさに国論を二分するような大激論に明け暮れていた日本。結局、野田首相は「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」という分かったような分からないような表現でハワイに発った。「よくぞあれだけの激しい反対論を押し切った」というのがTPP交渉国の率直な感想だろう。だからといって日本の特殊事情を勘案してくれるはずもなく「より高い次元の自由貿易圏を目指す」とさっそくオバマ大統領に釘をさされた。

 TPPは自由貿易圏だが、欧州のような統一市場ではないし、また統一通貨を目指しているわけでもない。その点で人類史上まれにみる壮大な社会実験を行っていた欧州だが、いわゆるソブリン危機によって、通貨同盟も崩壊しかねない状況となっている。

 ギリシャ問題こそ何とかクリアしたように見えるが、問題はイタリアだ。イタリアの国債発行残高は約1兆9000億ユーロ(約200兆円)で、先週には国債利回りが7%台に上昇した。この金利水準は債務の返済ができなくなると判断される水準。ユーロ圏(通貨ユーロに加盟している17カ国)のみならず、欧州全体に激震が走った。しかしECB(欧州中央銀行)が懸命に買い支えたとされ、その結果、イタリア国債の利回りは6%台半ばまで下落したのである。

 これで金融市場は何とか落ち着きを取り戻し、株価も世界的に上昇した。しかしこれで欧州の債務危機がいい方向に向かっているとは言えない。最大の問題は、イタリア国債の利回りがこの状態で落ち着くかどうかまったく不透明であることだ。ベルルスコーニ首相の辞任によってこれまでよりもイタリアの経済運営に信頼感が生まれるとしても、財政再建には厳しい緊縮政策を実行する一方で増税するか、あるいは経済成長を実現して税収を増やすか、といった道しかない。もちろん経済成長を実現できればそれが国民にとって最も負担が少ないということになるが、そもそも競争力を失って財政が厳しくなっているわけだから、自力での経済成長は難しい。

 しかしイタリアが混乱に陥れば、ユーロ圏やEU(欧州連合)、IMF(国際通貨基金)が現在用意している「弾薬」だけでは間に合わない可能性が大きい。たとえばEFSF(欧州金融安定基金)は1兆ユーロ強に資金を拡大することになっているが、「ギリシャを支えて、さらにイタリアを支えるにはまったく不十分」というのが大方の共通する見方だ。一部には2兆ユーロ(約212兆円)に増やしてもまだ足りないという見方もある)。

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