インモビ・ジャパン天畠社長に聞く、モバイル広告市場の未来(2/4 ページ)

» 2011年11月11日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

オフィスを持たないと広告はとりにくい

――グローバルに展開することのメリットは?

 メディアに限らず、『Angry Birds』のようなゲームでもそうですが、全世界のタブレットやスマートフォンでトラフィックが発生しているんですね。そのトラフィックに対して、広告をマッチングしようとすると、全世界にオフィスを持って広告主を開拓しないと、全部の需要を埋められないんです。メディアは世界中でトラフィックが発生するようになっているのですが、やはり広告主はローカルでしかお金を落としませんから。

 提携によってそれに対応しようとしているプレイヤーもいますが、自分のオフィスを持ってセールス活動をしないと、外に離れている広告主を取ってくるのは無理なんです。

先日総ダウンロード数が5億本を超えた『Angry Birds』

 そうしたギャップをちゃんと埋められるのは、インモビとアドモブだけですね。ミレニアムメディアは米国ではすごく強いのですが、米国だけに集中してトラフィックを持っているパートナーメディアが中心です。オープンなプラットフォームの上で、メディアがどんどんグローバル化しているトレンドの中ではちょっと違うプレイヤーなのかな、と見ています。

 インモビもローカルに閉じた広告主がほとんどなのですが、最初にお見せしたサムスンはグローバルにプロモーションしていますし、グーグルも競合でありながらインモビに出稿しています。国内のプレイヤーだと、海外戦略に取り組んでいるディー・エヌ・エーやGREEが米国で広告を出しています。ほかの日本の広告主でも、日本だけではなく成長市場であるアジアなどに対して、出稿していく流れになってきています。トヨタ自動車も日本では出稿していないのですが、海外では出稿しているんですね。

――政府系の広告主についてはいかがですか。

 オーストラリア観光局やアフリカ観光局といった旅行系の広告主からは相談を受けています。

 また、日本の広告主で言うと、日本の高額不動産の顧客は今、アジアのお金持ちなんですね。東日本大震災前は、旧軽井沢の案件はほとんど中国人が買っていって、IT系の人たちがそれに次ぐくらいでした。(8月9日に)上海から直行便が開通したハワイなんかも、これから中国人が買っていきますよね。そういうところを狙うための相談を受けていたりします。

――広告主は基本的にインモビだけではなく、アドモブにも一緒に広告を出しているんですよね。

 そういうことも多いですが、日本のケースでいうとNTTドコモはインモビにしか出していません。

 日本のインモビでは、広告を掲載するメディアの登録を、オンラインだけでは許していないんです。アドモブの場合、「僕のサイトを登録してください」とオンラインで申請するだけで登録できるのですが、インモビは日本ではそれを許していません。お問い合わせいただいたら、Webサイトのクオリティを一応チェックさせていただいて、大丈夫であれば初めてパートナーになっていただきます。アドネットワークとしては珍しくクローズドなんです。そのためクオリティが担保されているので、NTTドコモはインモビを選んでくださったんです。

 広告主は広告がどのメディアに出ているのかすごく気にするのですが、アドネットワークは基本的にどこに出ているか伝えません。しかし、インモビの場合は、クオリティが担保されている上に、どこに広告が出ているのかを広告主が全部トラッキングできる構造になっています。また、逆にメディアの方も、どの広告主が自分のサイトに広告を出したか全部トラッキングできます。そしてこれもアドネットワークとしては珍しいのですが、メディアが広告主を個別にブロックできるんですね※。広告を出した結果を見て、「ここはいいや」と外せるんです。

※アドモブにも同様の機能はある。

――スプラウトを買収したことは、プラットフォームとしてどのくらい差別化要素になっているんですか?

 アドモブやミレニアムメディアの広告制作に当たっても、スプラウトのAdvineは利用されてきたんです。そして、インモビがスプラウトを買収した後でも、いまだにアドモブでAdVineは使い続けられています。

 そこで、北米と欧州に関してはしないと思うのですが、日本では「AdVineを使うなら、うちを通してください」としようと思っています。AdVineについては、いろんなノウハウも溜まっているので、それが大きいですね。

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