なぜ人は相手の気持ちが分からないのか吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2011年11月11日 08時01分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 一方で、中小出版社15人(数人は同じ会社)が勤務する会社のほとんどに労働組合はない。15人のうち2〜3人の会社では、残業の上限が30時間と決まっていた。仮に時給2000円とし、30時間の残業をした場合は月に6万円。年間では、72万円となる。この2〜3人の月の、サービス残業、つまり、30時間以上の分は30〜40時間という。この分の賃金はもらえない。

 残りの12〜13人の会社は上限がなかったが、会社がその残業代を全額支給するわけではない。「年俸制」などと称して残業代を払わないのだという。だから、「サービス残業が月に50〜60時間前後にはなる」と話している者もいた。

なぜ、人は相手のことが分からないのか

 ここまで説明した主要出版社と中小出版社の違いをどうとらえるか。編集者として同じような仕事をして、主要出版社の2人と中小の2人の収入は、残業代だけで年間70万円近くの差。実際の残業時間、つまり、本来、その人が受け取ることができる額で考えると、その差はもっと大きいはずである。

 基本給の差を含めると、差は一段と大きくなる。30代後半で双方の年収の差は、私の見積もりでは少なくとも350万円、もしかすると、500〜600万円の差が考えられる。わずか2年間で、1000万円の差が生じるのだ。

 ここまでの差がありながら、主要出版社で働く編集者らの「知ったかぶり」が始まる。私が印象に残った言葉で言えば、このようなものがあった。

 ・残業代も、その社員の評価が高ければ認められる

 ・結果を出せば、(上司らに)認められる

 ・今は、実力主義の時代。その待遇に応じて、賃金はいずれ上がる

 ・今は終身雇用制がないから、転職をしていくことでキャリアアップが可能

 ・結局、(中小出版社の編集者は自分たちに)嫉妬している

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