日本のコンテンツは普及しているのか――答えはWikipediaで遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/3 ページ)

» 2011年11月09日 08時46分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研
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 JAPAN EXPOに出かけたときに、「日本のコンテンツがなぜフランスで受けるのか?」について、何人もの人たちに聞いた。いろいろな答えがあったのだが、印象的だったのは、フランスでの日本マンガブームの生みの親といえるドミニク・ヴェレ氏へのインタビューだった(参照リンク)。彼は、スーパーマーケットでの消費財の購入率や1人当たりのマクドナルドの消費量が世界でもトップクラスとなった現在のフランスでは、日本の私小説的なマンガによって、若者たちは魂の部分を取り戻せるからではないかと言ったのだ。

 それを示すように、萌え系など、日本でしかありえないような私的な設定の作品が、大物映画監督の作品よりも多く他言語のページが作られていたりするのである。このデータ全体を見ると、ハリウッドやディズニーを中心にした米国コンテンツが圧倒的に世界を支配していることを再認識させられる。だが、それとは違うもう1つの大きな流れを描き得るのが、日本コンテンツだと思う。米国のステーキやハンバーガーの世界に対して、寿司や豆腐の世界が存在し得るということだ。

 この部分、つまり日本のコンテンツのどこが世界の人々の心に刺さっているかを知ることは、とても大切なのではないか? 何かを売りたい人は、自分の売りたいモノを考える前に、買う人を見るべきなのだ。

 次回は、日本のアニメやマンガや映画など、Wikipediaにある日本コンテンツすべての他言語対応状況を見てみることにする。ちなみに、「クールジャパン」という項目は、英語とドイツ語の2つしか他言語ページが作られていない。

遠藤 諭(えんどう さとし)

ソーシャルネイティブの時代 『ソーシャルネイティブの時代』アスキー新書および電子書籍版

 1956年、新潟県長岡市生まれ。株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所 所長。1985年アスキー入社、1990年『月刊アスキー』編集長、同誌編集人などを経て、2008年より現職。著書に、『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書および電子書籍版)、『日本人がコンピュータを作った! 』、ITが経済に与える影響について述べた『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著)など。各種の委員、審査員も務めるほか、2008年4月より東京MXテレビ「東京ITニュース」にコメンテーターとして出演中。

 コンピュータ業界で長く仕事をしているが、ミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』の編集を手がけるなど、カルチャー全般に向けた視野を持つ。アスキー入社前の1982年には、『東京おとなクラブ』を創刊。岡崎京子、吾妻ひでお、中森明夫、石丸元章、米澤嘉博の各氏が参加、執筆している。「おたく」という言葉は、1983年頃に、東京おとなクラブの内部で使われ始めたものである。


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