日本のコンテンツは普及しているのか――答えはWikipediaで遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/3 ページ)

» 2011年11月09日 08時46分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

他言語展開コンテンツNo.1は『ドラゴンボール』と『ONE PIECE』

 さて、こんな話を書いているのは、日本のコンテンツの海外への広がりについて調べていたからだ。いろいろなアプローチを試している中で、簡単なプログラムを書いてWikipedia日本語版の全項目について、他言語でのページ作成状況を集計してみたのだ。下の図は、分かりやすい例として『ドラゴンボール』などの日本のビッグタイトルや『初音ミク』、『萌え』などのコンテンツ関連語、いまどきの一般的のコンテンツの例としてTBS系のアニメ番組について拾い出したものである(オタク系が充実していますからね)。

Wikipedia日本語版(2011年10月27日現在)で各コンテンツや関連語の他言語ページの作成状況を表にしてみた。オレンジ色のセルが、当該言語のページがあることを示している(クリックして拡大)

 横軸は、ここで選び出したすべての項目に関して、その言語版の多い順となっている。英語、中国語が圧倒的に強いことが一目瞭然で、次いでスペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語などの欧州のオタク先進国の言語が並ぶ。オタクエリートだと思われる北欧勢では、フィンランドが1つ飛び出していることも分かる。

 中国語・韓国語など、東アジアが1つのグループになるのは明らかだ(アジア第一グループとでも呼ぶべき言語である)。韓国語版に掲載された語句も多く、わずか10年ほど前までは韓国で日本のコンテンツが制限されていたとは思えない。一方で、アジアでも地域によって日本コンテンツの傾向が異なるのはご存じのとおりだ。

 このデータを見ていると、例えば、アラビア語のページが作られたかどうかが、そのコンテンツが世界へ広がる1つの通過点になるように見える。すでに世界中に広がったともいえる『ドラゴンボール』は、スロベニア語やハイチ語、サルデーニャ語にまでページが作られている。順当に広がりはじめている『初音ミク』だが、ロシア語のページがまだのようだ。次のコンサートは、ロシアのコスプレの聖地ヴォロネジでやるのがよいのではないか?

 Wikipediaで他言語ページが作られているということが、その言語を使う地域での市場性をダイレクトに表現しているのではない。そのコンテンツが好きな人物がたった1人だったとしても、Wikipediaに自らの言語のページを作れてしまうからだ。英語のページだけは作られているというケースも少なくないので、その地域の英語力も影響するかもしれない。しかし、この他言語ページの有無こそが、日本コンテンツの何たるかを知る手がかりになるのではないかと思う。

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