会社の哲学に従えない人は辞めるべきか?吉田典史の時事日想(3/3 ページ)

» 2011年11月04日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]
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ベンチャー企業の雄の実態

 20〜30代の会社員向けのビジネス雑誌の編集者などと話すと、2人のうち1人くらいの割合で、ベンチャー企業と言われる楽天やサイバーエージェント、ワタミなどの話が出る。時には、グーグルなどの名も挙がる。

 編集者たちはこれらの会社を取材した経験をもとに、こんな解説をする。

 「●●(前述したベンチャー企業の名)は、創業のころからそのメンバーで哲学や価値観を共有し、支え合ってきた。だから、あそこまで成長した」

 私は、この分析には事実認識において大きな誤りがあると思う。私が知る限り、これらの会社は創業期に、多くの人が辞めている。私の知人で、ここで挙げた会社の退職者はざっと20人ほどになる。

 この人たちから耳にする話と、編集者の認識は正反対なのだ。編集者たちは、これらの会社の経営者や数人の社員だけの話でその会社を判断している可能性が高い。少なくとも、退職者や取引先、金融機関、そこに出入りするコンサルタントらには接触していない。

 そんな私の問題意識をぶつけてみると、奥山さんはこう話した。

 「このレベルのベンチャー企業は、今は大企業のようなレベルに達しているから、『哲学や価値観を共有し、支え合う』と言える。こういう会社も、創業期や売り上げが少ないうちはそんな悠長なことは言えなかったはず」

 ここまでの流れで、私は奥山さんの考えにおおむね納得する。これはおそらく小さな会社の多くの経営者に見られるものだと思う。ただ、1つだけ、心の中で依然として“戸惑い”がある。それは、冒頭で述べたものだ。

 「最悪の場合、経営者の考えや発言が『会社の哲学』として受け止められ、社員はいかなる時もそれに従うことが求められないだろうか」

 このことについての奥山さんの回答と、私が感じることに多少の温度差のようなものがあるように思えた。それはリスクを背負う経営者と、個人事業主の考えとの違いとも言える気がする。奥山さんは、こんなことも話していた。「個人事業主として仕事をする人と、経営者として組織を作ろうとする人の考えは違う。個人事業主の考えでは、組織は作れない」

 読者の皆さんはどのような考えだろうか。

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