コンプライアンスに熱心な管理職が、本当に恐れていることとは?(1/2 ページ)

» 2011年11月01日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 コンプライアンスが、現在の企業経営において重要な考え方であることは間違いない。しかしそれが、自分の最も大切な役割だと考え、さまざまなリスクを見出し、ルールや手続きやフォーマットを作り、メンバーにその正確な運用を強いるような管理職が多いのには首をかしげてしまう。

 このタイプの管理職の多くは中高年であるが、そのコンプライアンスにかける熱意は、マネジャーに求められるそれ以外の仕事にかける熱意とは比較にならないほど強い。彼らがそうする表向きの理由はもちろん「コンプライアンスを重視した組織運営は管理者としての大切なミッションだ」ということなのだが、本音はまったく違うだろうと思う。

 中高年の管理者の多くは、企業内部における既得権者である。役職ポストを独占し、権限を持ち、給与水準は保証され、経営からはそれなりの存在価値を与えられている。彼らにとって困るのは、部下が自分より優秀であることが露見することである。あるいは、自分には理解できない創意工夫やイノベーションが起こることだ。

 会社の規模的成長が望みにくい今、組織も処遇も仕事の仕方も何も変わらないほうが都合がよい。部下が生き生きと働き、成長し、その能力を存分に発揮することは、彼らにとって本音では(もしくは無意識下において)望ましい状態ではないのである。

 そこで、コンプライアンスの出番となる。ルールや手続きを増やし、その厳格な運用を求めれば、若手の自由な活動、付加価値時間を制限することができる。仕事上の工夫や変革、新しい知識や技術の導入などを提案されても、それによるリスクを見出すことさえできれば“コンプライアンス”を理由に却下することができる。

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