下方修正などを嫌気して持高調整の売りに押されて軟調清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年10月31日 16時35分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 前場中ごろに円売り介入が見られ、一時大幅高となる場面もありました。ただ、ある程度介入があるのだろうと予想されていて、株価に織り込まれていた面もあり、また、決算発表が本格化するなかでやはり円高の影響で既に赤字に転落、あるいは業績の下方修正を発表する企業が多かったこともあり、「遅きに失した」というような感じで売られました。売り場を探していたというよりは「今さら」ということで買い上がる動きもなかったのだと思います。下方修正の発表も円高の影響が大きくこれまでの円高で既に大きく業績を悪化させている企業が多いことが円売り介入への影響が限定的となる要因となったものと思います。

 市場のセンチメント、雰囲気というのは同じ事象が起きても結果を違った方向に導くことも多いということを如実に示すことになりました。為替市場では「待ちに待った」介入であり、素直に「乗れる」のだと思いますが、企業の業績にとってはここまで1ドル=80円を割り込んでいた期間が長すぎたことや介入が入っても1ドル=80円水準まで戻り切らないことを嫌気する動きも強いのだと思います。既に中間期まで終わっている企業も多く、たとえここで1ドル=80円程度まで戻っても「焼け石に水」ということなのだと思います。これまでの政府の無策ぶりを顕著に示しているということでしょう。

 また、「本気で」円高を阻止するつもりなのかどうかを見極めたいという動きも多いと思われます。これまでの介入でも1日で終わってしまうことが多く、まるで円を大量に買いたい人のために買い場を提供しているような円売り介入が多かったのですが、今回もこれまでと同じように円安に振れるのは今日限りということであれば円を買う人にとってはいいのかもしれませんが、輸出企業などにとってはほとんど影響がないということになってしまうのでしょう。いったんは持高調整もあって買い上がる動きもみられましたが、買い戻し一巡後は買い気に乏しくなったことでも当局は試されているのだと思います。

 これであれば、例えば1ドル=80円を割り込むタイミング介入をしつこく繰り返せば市場参加者は「80円を割り込むことはないんだな」と思うわけで、逆に80円で円を売りやすくなり、1ドル=75円台に入ったところで行なえば、「さすがに75円台はまずいということなのだな」ということになるのです。そして日銀の金融緩和と歩調を合わせるとか、決算発表の前に円高を阻止しておくという方法もあったのではないかと思います。円を安くしたいのであればもっと効果的なタイミングを考えてみても良かったのだと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
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