コラム
» 2011年10月31日 12時06分 UPDATE

藤田正美の時事日想:弱い国がターゲットにされる、ユーロのジレンマ (1/2)

ギリシャの債務危機を巡り、ユーロ圏の首脳が議論を交わした。ようやくギリシャ支援のパッケージが決まったが、問題はこれで「解決」したのだろうか。金融市場は次なるターゲット……弱い国を探し始めているようだ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 10月26日夕方から始まったギリシャ債務危機をめぐるユーロ圏首脳会議。翌日午前4時まで10時間というマラソン会議で、ようやくギリシャ支援パッケージがまとまった。

 ギリシャ国債を保有する民間銀行は自発的に元本の50%を償却する。一方で銀行は協議の中核的自己資本比率を9%とし、約1100億ユーロ(約11兆8000億円)と見積もられる資本増強を来年6月までに行う。EFSF(欧州金融安定基金)の実質的な資金規模を1兆ユーロ(現在は4400億ユーロ)にまで引き上げる。さらに財政・経済統合案の最終報告を来年3月までに行う。イタリアに対して財政健全化のための構造改革を求める

 これでギリシャが無秩序な債務不履行となって、金融機関の信用供与という枠組みが崩れ、欧州発世界金融恐慌に陥るという恐れはいったん遠のいたようにみえる。実際、この決定を受けて世界の株価は急反発した。リスク回避に走っていた投資家がいっせいにリスク資産である株を買いに動いたからである。

 しかしその高揚感は、イタリアの国債入札で水を掛けられた。10年債の利回りが5.86%から6.06%と先月よりも上昇したからである。この数字は、ユーロ圏の包括策にはまだ詰まっていないところがあり、さらに将来にわたってさまざまな問題が噴出する可能性があると考えている、ということを意味する。

 そもそも統一通貨ユーロには矛盾が内包されている。それぞれ経済事情の異なる国が、財政赤字をGDP(国内総生産)の3%以内に抑えるといういわば「善管条項」でユーロの価値を維持できるとしたからである。

 しかしユーロ圏に加入したいわゆる周縁国(とりわけ南欧)は、低利で借りられることから国債の発行が増えた。金利という歯止めが消えれば、経済成長をするために資金を導入するのは当然でもある。

 英国はユーロを導入しなかった。このことについてメージャー元首相は「ユーロの構造に欠陥があると見ていたからだ」と英フィナンシャルタイムズに書いている。つまり「財政同盟を伴わない通貨同盟はリスキー」ということだ。欧州統一市場を主導した英国が統一通貨に加わらなかったことに、他の欧州諸国は反発した。

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