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» 2011年10月28日 02時10分 UPDATE

「分からないものが一番いい」――秋元康氏のAKB48プロデュース術 (5/7)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

何かの1番を集めたいのがAKB48

西村 初歩的なことですが、最初24人とおっしゃいましたが、AKB48の“48”というのは何で48なんですか?

秋元 それは全然意味なかったんですよ。商品開発番号みたいなものを作って、無機質にしたわけです。僕もずっといろんなアイドルをやっていて、動物の名前とか花の名前とかあったのですが、それよりも無機質な方が面白いと。

 でも、それが結果的に海外で認知されやすいということになるんです。その時は何も考えていないですよ。「何でもいいんじゃないの」というようなことで、暫定的に秋葉原48と最初は言っていて、そのうちAKB48となりましたから。そのころからだんだんパッケージビジネスが厳しくなっていて、「秋元さん、ライブにいち早く目を付けましたね。さすがです」とか言われますが、そんなことまるで考えていないですからね。

ah_aki4.jpg CDシングル生産数量(出典:日本レコード協会)

 もっと泥縄というか何も考えていなくて、初めは24人で毎日公演やって、土日は3回公演やるんです。そのうちにみんなすごい疲れて、「これ1チームじゃ無理だな」と気付くんです。それで2期生を募集しないと大変だというので2期生を募集して、それがチームKとなったんです。チームA(1期生)、チームKができたなら、(次に)チームBもあった方がいいんじゃないのと。初めから僕がすごく考えていたわけでもないし、戦略なんて何もないですよね。

河口 AKBの形とか色というのを考えたのですが、秋元さんがメンバーを選んでいるとなると、AKBというのはこういう顔だという戦略的なものがメンバーたちの中に見え隠れしているのではないかと思うのですが。

秋元 いや、何も考えていないですよ。人(キャラクター)が魅力なんです。もちろん歌がうまいとか、ダンスがうまいとか、演技がうまいとか、美人とかそれも1つの個性であり、魅力です。しかし、キャラクターとか、「AKB48に存在することによってあなたは何を見せたいんですか」ということが大切です。

 だから、ある子はブログがすごく面白かったり、ある子はすごくコントの間が良かったり、ある子はマンガがうまかったり……将来的にAKB48は、自分は何の才能があるんだか分からないんだけど、とりあえず行儀見習いみたいにして入って、その中で自分は絵の才能があったんだとか、歌の才能があったんだとか、裏方として作詞家になろうとか、そういうことを含めて、何か能力を試す場所になったらいいと思うんです。

河口 顔のほかにもスタイルとか運動能力とかありますよね。背が高い、低いとか。

秋元 いや、だからほとんどないですよ。ないというのは、プロポーションとかも問わないですし、そこに見たいのはリアルさですよね。例えば、すごく太っていた子がやせていく、やせていた子が太っていく、背の低い子が半年ですごい伸びたりすると。そういうのをみんなが見ているわけです。だから、「AKBとはこうじゃなきゃいけない」というのがないですよね。

 韓国のK-POPの方が多分、少女時代ならこれくらいの身長で、こういうスタイルでということに厳しいと思うんですよね。AKBはむしろそこは自由で、そこにオンリーワンになってもらうための何かが欲しいということです。

 少女時代はやっぱりすごいですよ。ダンスの能力であり、スタイルであり、歌にしても。でも、少女時代のオーディションがあった時に、何人が「受けてみよう」と思うかなと。AKBの一番の面白さは「私も受かるかもしれない」「私だって受かるわ」というところがいいんですよ。実際、誰にでもチャンスがあると思うんですよね。

西村 学校のクラスで1番もてるかわいい女の子じゃなくてもいいわけですよね。

秋元 そこをみんなちょっと誤解しているのですが、別に5番目にかわいい子を集めているわけではないんです。1番目にかわいい子という言い方があるとしたら、1番目に足が速い子でもいいんです。何か1番を持っているかということ、その1番を集めたいということなんです。

 中にはまだその1番が見つからなくて、もがいている子もいます。でも、それはいいと。悩んでもがいているところがリアルであれば。

河口 子どものころから練習して、変に完成した人よりは、秋元さんの話だと未完成でもいいから大きな器を持った人を探しているような気がしますね。

秋元 そうですよ。だから、もう本当にびっくりしますよ、その成長ぶりに。こんな芝居できたのかなとか、こんな歌い方やこんなフェイクができたのかなということがどんどんできるようになって面白いし、先輩、後輩の関係ができたりとか。

 あるいは人それぞれ何というんですかね、「彼女たちが頑張っているから僕も頑張ろう」となるんですね。「彼女があれだけ寝ないで頑張っているので、私も歯科衛生士の資格をとるために頑張ります」とか、「みんなが寝ないで頑張っているので、サラリーマンだけどちょっと嫌なことがあっても頑張ろう」とか。できるだけドキュメンタリーで、正直でありたいと思うんです。

 前田敦子というエースがいるのですが、前田敦子は本当に不器用な子で、すぐ顔に出ちゃうし、心にないことを言えないんです。だから、すごく誤解されて、「やる気がないように見える」とか「ぶすっとしている」とかバッシングを受けるわけですね。でも、いいんだと。

 もちろんほかのメンバーのように、どんな疲れている時でも「こんにちは」とか「よろしくお願いします」とか言えるのも魅力だと。でも、前田みたいに正直で子どものような、そういう子もいていいんじゃないかと思うんです。「秋元さん、前田にもう少し愛想良くしろとか言わないんですか」と言われるのですが、「いい。そういう子もいるじゃないか」ということです。

 板野友美という子が高校1年くらいからか、髪を染めてきたんです。みんな基本的には黒髪だったのですが、よく考えたら「板野友美みたいな子はクラスに1人いるよな」と。いるでしょ、ああいう子が。だからそういう子がいてもいいとか。全部が同じようなタイプにならなくてもいい。だから多分、教育というのはどれだけその子を見てあげられるかだなと思いましたね。

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