そのデザインは“適正”? 震災の年のグッドデザイン賞から見えてきたこと郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年10月27日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 2011年のグッドデザイン大賞が11月9日に発表される。

 大賞の候補作品を展示する「GOOD DESIGN EXHIBITION 2011」(東京ミッドタウン・デザインハブ)に出かけた。例年になく気になるデザインがいっぱい。なぜだろうか? どうやら今年のグッドデザインの応募作品が、外っつらだけの美しさではなく、私たちの心に響くものであるからのような感じがする。

 それを引っ張りだしたのが、今年のデザインテーマ“適正”。“適正”って何だろう? グッドデザイン賞審査委員長の深澤直人氏(プロダクトデザイナー)はこう説明する。

 今年選出されたデザインが、将来の私たちの生活に適正に溶け込んでいくであろうということを基準に審査に臨みました。それは言うまでもなく、日本のみならず地球上のすべてが体験したと言える東日本の地震と津波による被害、そしてそれによってもたらされた原子力発電所の事故や人びとの不安に起因しています。(グッドデザイン賞Webサイトより

 東日本大震災後、消費者は暮らしの必需品と、心に響く必需品だけを買うようになった。デザインもそれに呼応して、飾るだけのデザイン、単にほかと差別化しているだけのデザインは鳴りを潜めた。なぜそういうデザインをするのか、なぜその素材を選ぶのか、暮らしに不可欠なのか、そもそも買うべきなのか。説明が付かないと買われない。そんな雰囲気すらある。

 華飾が不要になったとすると、デザインは軽視されるようになったのか? そうではなさそう。デザインは以前に増してもっと大切になった。何らかの筋道を立てる上で重要になった。どうやらそれが適正につながっている。

 “適正なデザイン”とはいったい何なのか? 展示場を歩いて考えてみた。

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