典型的な“人事マン”に新卒採用を担当させてはいけない3つの理由

» 2011年10月25日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 多くの企業では、採用という仕事は、人事が担当するということにだいだい決まっている。そして、採用数が予定に満たない、採用した人がイメージと違う、ミスマッチだという状況が特に近年続いている。

 このようになる原因はほとんどの場合、「学生のレベルが下がったこと」「大企業志向・安定志向」「活動量の少なさ」といった学生側の問題にされがちだが、私は人事の側にも大いに問題ありと考える。それは、典型的な“人事マン”が持つ行動原理が、“採用”という仕事には通用しないということだ。3点、挙げてみたい。

典型的な“人事マン”に新卒採用を担当させてはいけない3つの理由

 1つは、典型的な“人事マン”は、いつもリスクに焦点を当てることだ。法や規則に則り、間違いのない組織運営・人事管理を行うことには長けているが、目標を達成するためにどうすれば良いかといった思考は不得手であるし、何としてでも達成しようといった意欲も希薄である。

 採用活動はターゲットとなる人を多く集客し、その関心をひきつけ、説得し成約しフォローしていくという点で営業活動と同じである。ところが“人事マン”は、例えば採用広告においても、大げさな表現は「誤解を招いてはいけない」、思い切って訴求するポイントを絞った内容は「ほかのポイントを外して失敗したらマズイ」と安全運転をするので、結局、当たり障りのないごく普通の広告を作ってしまう。

 2つ目は、効率を重視することだ。昨シーズンはどうしたか、これまでどうやってきたか、他社はどうしているかを調べ、それを踏襲することで素早く着手し、効率的に進めるといった仕事の仕方には長けているが、独自性のある方法や差別化された打ち出し方を考えようとはしない。

 会社説明会にしても、選考にしても、典型的な“人事マン”は、毎年同じような内容を繰り返しているし、例えばグループワークが流行っていると聞くと、我も我もとそれを導入し始める。確かに、同じようなことや真似事をやれば効率はよいのだが、効率が、そもそもの目的である採用の数や質に優先してしまっていては、採用目標を達成できるはずなどない。

 3つ目は、一度決めたことを容易には変更しないことである。会社のルールに対して従業員から異論や疑問が出ても、大義名分やデータや経営者の意向を持ち出して押し通してしまうような対応は得意であるが、間違いや思い違いを反省したり、多くの声を素直に受け入れたりして、決めたことを柔軟に変更するのは苦手なのだ。採用活動は営業活動と酷似しており、目標に届きそうもないとなれば、途中の地点で素早く、柔軟に作戦を変更しなければならない。

 ところが、当初に決めた広告、説明会、選考、面接のやり方、スケジュールなど、状況が相当厳しいのに悠々としており、作戦変更など考えもしない。最後に「来た学生のレベルが低かった」という理由をつければよいと計算しているからだが、上記の2点も含め、このような行動原理を持つ典型的な“人事マン”に新卒採用を任せておいては、採用目標など達成できるはずがないのは当然である。(川口雅裕)

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