ソーシャルゲームにおける日本型データ・ドリブンのあり方とは(後編)野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(3/4 ページ)

» 2011年10月25日 12時55分 公開
[野島美保,Business Media 誠]

問題発見のための時系列分析

 ゲームの行動変数を直接に操作するゲーム内分析は、すぐにゲームシステムの改善案に結び付く点は強力であるが、広角からみた問題発見という意味では限界がある。

 そこで、KPIをマクロ的にみる変動分析とゲーム内分析との間を埋めるものとして、「ユーザーのプレイ時間や進捗に合わせた時系列分析」が注目される。時間はすべてのユーザーに平等な要素である。これを基軸にして、ユーザーがどのような行動をとっているか、グラフ化するのである。

ユーザー活動とプレイ時間の関係からの分析(クリックで拡大)

 図にあるように、横軸にとるのは、時間や進捗を示す変数である。横軸を単純に日付としなかったのは、時間概念にもバリエーションがあるからである。ゲームへのアクセスを示す変数として、登録からの日数、総ログイン時間などがある。さらにゲーム内での進捗を示すものとして、ゲームレベル、クエスト進行度などがある。

 それに対して、縦軸はユーザーの活動度合いを表す。ログインの有無やログイン頻度など、行動の活発さを示すあらゆる変数である。要は、ゲームへの熱中と関与の度合いを可視化するのである。こうした図を作ることで、ユーザーがはまるポイント、その反対の離脱ポイント、そして課金ポイントが明らかになる。

 図に示したアクティブ率のグラフは、ゲームへログインをした人の割合を時間軸に沿ってまとめたものである。例えば、レベル3から4に移る時にアクティブ率が大幅に下がっていれば、ここが離脱ポイントとなる。そこで、レベル3から4の部分に集中してゲーム内分析をすればよい。特定のクエストが難しかったり、時間を要するために離脱しているかもしれない。あるいは、友人がいなければ先に進めない設計なのに、レベル3では友人を集めるのに十分な猶予がないのかもしれない。

 同様に課金ポイントを知ることができる。例えば課金率10%というと、一律に確率が決まっているように思われるかもしれないが、時間軸で見てみると課金率にもバラつきが表れる。レベル分布やログイン時間別にユーザーを分けてみることで、課金に至る確率と要する時間を知ることができる。

 概して、長くゲームを続けるユーザーほど課金率は高いが、課金に至るまでの時間をどう設定するかは、かなり微妙な問題となる。資金回収の面からは、課金ポイントは早ければ早いほどよいかもしれない。しかし、あまりに早いタイミングにすると早く飽きがきてしまう。課金とはユーザーの熱中や満足度を金銭に変えることなので、早く払い出しをしてしまうと、その熱意が後に続かなくなるのだ。こうした調整をするのにも、時間軸に沿ったデータを丹念に見ていかねばならない。

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