アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。
本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2011年7月20日に掲載されたコラムを、加筆修正したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。
居間にテーブルが欲しいと思って家具屋さんに出かけたが、ちょうどよいサイズのものが見つからなかった。毎日生活の中で使うものなのに、ピッタリのものが手に入らない。買い物をしようとして、こんな気分になったことはないだろうか? いまの私だと、自転車とか、メガネとか、コンピュータもそうなのだが、「これだ」という大きさやデザインのものがない。
10年以上前になるが、知育玩具の元祖ともいえるフレーベル館に取材したときに、「いまの積み木は立方体が入っていないのがほとんどなんですよ」と言われてショックを受けた。
積み木の製造方法として、厚めの板を切って作ったほうが安くすむ。ところが、そのようにして作ったほかの部品に合わせて立方体を作ろうとすると、どうしても一辺の長さが材料の板の厚さより長くなってしまうからだという。フレーベルの「第三恩物」という立方体8個だけの積み木のすばらしさを知っている私としては、信じられない話だ。
ちょうどよい品物がないという話を書いたが、逆に、多くのバリエーションはなくてもよいと思えることも確かにある。ポルシェ博士の手がけたフォルクスワーゲン ビートルや、その子どもたちによるポルシェのスポーツカー、アップルの初代MacintoshやiMac、iPhoneなんかも、その思想上にある。
一方で、世界に広がるゼネラルマーチャンダイジングストア(GMS)が、いちばん廉価な品を見つくろってきて世界中どこでも売ってしまうという状況は、積み木と同じ結果をもたらしているかもしれない。
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