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» 2011年10月20日 08時00分 UPDATE

市販のサラダは何ベクレル? 秋葉原で放射能測定を体験した (1/4)

今後数十年、私たち日本人が付き合っていかなければならない放射能問題。生活の基礎となる食品の放射線量測定を行える施設が秋葉原にできたと聞き、実際に体験してみることにした。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 福島第一原発事故後、私たちを悩ませている放射性物質。チェルノブイリ被災者救済法では、土壌のセシウム137の量が1平方メートル当たり3万7000ベクレルを超えると汚染地域であると定義。14万5000平方キロメートルが管理下に置かれた。

 日本でも現在、文部科学省が進めている航空機モニタリングで、宮城県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県の一部地域で1平方メートル当たり3万ベクレルを超えていることが判明している。住民の健康が心配されるが、その中には農業が盛んな地域も多く含まれており、他地域の人々にとっても食品の安全性が気になるところだろう。

ah_hou1.jpg 航空機モニタリングで測定した地表面へのセシウム137の沈着量の合計を示したマップ(10月20日時点、出典:文部科学省)

 実際、横浜市教育委員会では給食の放射性物質測定を毎日行っており、10月12日には1キログラム当たり350ベクレルの放射性セシウムを乾シイタケから検出。暫定規制値以下ではあったものの、今後、乾シイタケの使用を控えることを表明している。

 大気中の放射線量を測定する空間線量測定機は数万円で購入できるため、個人で活用している人も多い。しかし、食品の放射能測定機は数百万円と高価であるため、公的機関などの利用にとどまっているのが現状だ。

 そんな中、千葉県柏市で放射能測定機をレンタルで貸し出すスペース「ベクミル」が10月11日にオープンし、話題を集めている。そして、東京でもPCショップ「ドスパラ」などを運営するサードウェーブが10月12日、放射線計測・放射能検査専門の研修施設をJR秋葉原駅前に開設。放射線についてのセミナーや計測実習を無料で行っている。

 ニュースなどで食品の放射能計測結果を目にすることは多いが、それがどのように行われているのか知る機会はあまりない。そこで、サードウェーブの研修施設を訪ね、食品の放射能計測の流れを実際に体験してみることにした。

どんな仕組みで計測するの?

 JR秋葉原駅の電気街口から徒歩1分、1階が献血ルームになっている新秋葉原ビルの10階にサードウェーブの研修施設はある。まだ開設したばかりとあって、セミナールームの隣の事務室内は机も少なく、スペースが目立っていた。

ah_hou2.jpg サードウェーブの研修施設はJR秋葉原駅のすぐそばにある

 放射能測定のために筆者が持っていったのは、近くのスーパーで購入した埼玉県産のもやしと20品目のサラダ(産地不明)。魚や野菜は単品では産地が書いてあるのだが、複数品目を混ぜている時は産地が多岐にわたるためか書いていないことが多い。そこに不安を抱いていたので今回、測定対象とした。

ah_hou3.jpgah_hou4.jpg 埼玉県産のもやし(左)、20品目のサラダ(産地不明、右)

 放射線の説明と測定する際の注意についての講義を1時間ほど受けた後、いよいよ放射能測定機と対面。使用するのは、ウクライナのアトムコンプレックスプルィラド社製のNaIシンチレーションスペクトロメータ「SEG-001 “AKP-S”-40」で、農産物や水だけでなく、腐葉土などの放射能測定もできる。ウクライナやベラルーシ、ロシアなど旧ソ連諸国で300台が導入されているという。

ah_hou5.jpg 左がSEG-001 “AKP-S”-40。ケーブルでつないだノートPC(右)に専用ソフトウエアをインストールして計測する

 NaIシンチレーションスペクトロメータは、どんな仕組みで放射能を計測するのか。

 セシウム137はベータ線を放出してバリウム137の準安定同位体となるのだが、その後、バリウム137の準安定同位体はガンマ線を放出して安定したバリウム137となる。このガンマ線がNaI(ヨウ化ナトリウム)結晶に当たった時に発生する蛍光(シンチレーション=エネルギーを与えられた原子が放出する光)を調べることで、物質中に含まれる放射性物質の種類を調べるのである。

 冒頭で触れたベクミルでも、同様の仕組みで計測するドイツのベルトルード社製「LB 200」と「LB 2045」を使用している。

 従来、厚労省では「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」で、正確性の問題から放射能測定は、別の仕組みのゲルマニウム半導体検出器で行うと定めていた。しかし、ゲルマニウム半導体検出器だと計測に時間がかかることから、7月29日に事務連絡という形で、NaIシンチレーションスペクトロメータの使用も公的に認められた。

 SEG-001は約250万円と、個人ではなかなか手が出せない値段。だが、これまで推奨されていたゲルマニウム半導体検出器は1500〜2000万円+設置費用なので、それに比べると安く手に入ると言える。

ah_hou7.jpg 高価な上に場所もとるゲルマニウム半導体検出器(出典:佐賀県公式Webサイト)
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