ミスマッチの原因も、ここに求めることができる。学生が会社に入ってから「違った」と感じるのは、人事部の自社に対する理解度と表現力の不足によるところもある。我が社の特徴、強みと改善点、魅力と問題点がしっかり分かっていないから、学生にも伝わらない。人事異動になってすぐの新聞記者が書く記事が分かりにくいのと同じで、分かっていない人が表現したものは分かりにくいのである。分かっていない人が表現したものをもとに選ぶのだから、会社の選択を誤るのも無理からぬところだ。
「自社のことは熟知しているが、相手が学生なので、彼らが分かる範囲のことを表現しているだけだ」とか、「採用活動なのであるから、実態そのままを伝えるのではなく、広告的に良い点のみを分かりやすく伝えるのは当然だ」といった反論もあると思う。
しかしながら、分かる範囲のことやその会社の良い点が、社風や職場環境、仕事に生き生きと取り組む社員の様子といったことしかないはずはない。マーケティングの各種フレームでも、マッキンゼーの会社の7Sでも、同業他社との差異を過去の新聞記事でも参考に明確にするのでもいいが、深く自社を考察した上で、採用広告を作るべきである。でないと、他社と差別化されないので採用も上手くいかないし、学生だって選ぶのに困るし、入ってからミスマッチだと騒ぐことになってしまう。(川口雅裕)
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