ギリシャがデフォルトを起こせば、どうなる?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年10月17日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 欧州を“妖怪”がさまよっている――。マルクスとエンゲルスは『共産党宣言』の冒頭にそう書いた。そして21世紀の今日にも欧州に妖怪がさまよっている。現代の妖怪は、共産主義ではなく金融不安である。

 もともとはギリシャの債務危機に端を発したものだが、それがユーロ圏の危機となり、さらに欧州金融全体を巻き込んだ危機にまで発展している。もちろん欧州金融界が大混乱に陥れば、米国もアジアも無事ではいられない。

ギリシャがデフォルトを起こせば

 ギリシャの国債については、もはや「デフォルト(債務不履行)はほぼ確実」と言ってよさそうだ。問題はすでに次の段階に移っている。ギリシャがハードランディングした場合に、その影響がイタリアやスペインに飛び火するのかどうか。つまりこれらの国が資金繰りに窮してデフォルトということになれば、経済規模がギリシャに比べてはるかに大きい(イタリアはギリシャの約7倍、スペインは約5倍)だけに、その影響は計り知れない。

 ギリシャなどが危機に陥って、ユーロ圏17カ国はEFSF(欧州金融安定基金)を創設し、そこに資金をプールすることで対応を図ってきた。しかしEFSFの資金枠は4400億ユーロ(約46兆円)。ギリシャのデフォルトに伴う銀行への資金注入などを考えると、とてもイタリアやスペインにまで手が回らない。この枠をさらに拡大することになれば、ドイツ国内の反発を抑えることが難しくなる。今月23日に開かれるユーロ圏とEU(欧州連合)の会議や、11月3〜4日にフランスで開かれるG20首脳会議がより重要になってきたのはまさにそれが理由だ。

 しかし問題は国だけにとどまらない。ギリシャなどの国債は、欧州の金融機関を中心に世界の金融機関が保有している。ギリシャがデフォルトということになれば、当然、金融機関の資産が毀損することになり、信用が落ちる。2008年のリーマンショックのとき、サブプライムローンに絡む不良債権で銀行の資産が毀損して、信用が落ちたのと同じことが起きるのである。

 こうなると銀行間の資金の融通が滞り、その結果、銀行は新たな融資を停止し、既存の融資を引き揚げる。いわゆる“貸しはがし”だ。ここで大きな打撃を受けるのが貿易だ。実際、リーマンショック直前の世界の貿易額は半年後にほぼ半分になった。リーマンショックのとき、当時の自民党政権は「日本の金融機関はそれほど不良債権を保有していないから、他国に比べて直接の影響は小さい」としていたが、実際には先進国の中でもドイツなどと並んで大打撃を受けたのは日本である。

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