2011年、マルチ「な」メディアへの移行中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/3 ページ)

» 2011年10月14日 14時03分 公開
[中村伊知哉,@IT]

注目すべき3つの状況

 それから20年。マルチメディアが終わり、その次のステージが始まる。それが今年だ。以下の3つの状況が現れている。

(1)第4のメディア(デジタルサイネージ)

 昨年は、スマートフォン、電子書籍リーダー、タッチパネルPCなど、新型のデジタル・デバイスが一斉にラインアップされ、急速な普及を見せた。大小さまざまの、モバイル型あるいは壁一面据え置き型のディスプレイが登場。50年間君臨してきたテレビ、15年間広がってきたPCとケータイに次ぐ、いわば「第4のメディア」が登場してきた。

 これを出版業界は電子書籍元年と呼び、教育業界はデジタル教科書元年と呼び、広告業界はデジタルサイネージ本格化と読み、いずれも異なるとらえ方ながら、実は1つの事象だった。

 そして今年年頭のラスベガス「CES」はネットTV一色となり、多彩なメディアがさらに多様化するのか、あるいは多彩なメディアがまたしてもTVに集約されていくのか、改めて混沌とした場面を迎えた。

(2) 融合ネットワーク(地デジ)

 2010年はブロードバンド網の全国化が達成される目標年だった。そして、1994年に政策が始まった放送ネットワークのデジタル化、つまり「地デジ」が今年ほぼ完成。日本は世界に先駆け、通信・放送を横断するデジタル高速ネットワークを整備する。クラウド列島だ。メディア融合の環境が整うわけだ。

 明治以来、郵便局整備と並び国家が推進してきた情報網の計画的な整備が完了する。国の通信政策も大きく変わる。アナログ跡地の電波割当方法が決まれば、もうインフラ政策は要らないんじゃね? さらにいえば、計画的な社会資本の全国整備というのは、今後もうわが国では案件がないかもね。

(3)ソーシャルサービス

 CD-ROMが普及した20年前から、コンテンツの重要性が唱えられてきた。インターネットの登場により、放送やパッケージに加え通信のコンテンツも産業として注目されてきた。政府はコンテンツを国の戦略成長産業と位置付けた。

 それから15年ほどたち、コンテンツ産業は元気がない。ショッボーン。それに代わり、ソーシャルメディアが花盛り。トラフィックも収益もソーシャルに集中している。コンテンツが真ん中に座りながらも、それをネタにつながった人々がつぶやき、段幕をつくる。そちらに関心が移り、主役を張る状況は当分続くだろう。コンテンツから コンテキスト、コミュニケーション、コミュニティへ。

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