その燃費、基準はナニ? 消費者に誤解与える“低燃費”相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年10月06日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 プリウスが発売された際、多くのメディアはこのクルマの燃費について「38キロ」という数値を記事に取り入れていた。実は、JC08モードとの間には6キロの乖離(かいり)がある。38キロという数値は「10・15モード」で導いた値なのだ。

 この10・15モードは、エンジンやその他の部品が十分に暖気された状態で、メーカーお抱えのテストドライバーが運転する特殊な環境下で計測される。換言すれば、一般の消費者が使う状態とは大きくかけ離れた状況で導き出された値なのだ。当然のことながら、10・15モードは“究極”とも言える数値になるわけだ。

 筆者自身、プリウスや他社のハイブリッド車を計測しても10・15モードの値を導き出す事は1回もできなかった。インターネット上では、ユーザー自身がデータを持ち寄り、実燃費を開示するサイトが複数存在するが、生のデータがJC08モードに近いのは言うまでもない。

 極論すれば、10・15モードはメーカー側にとって好ましい値であり、消費者への遡求力も高い。日経がより実燃費に近いモードを採用して記事を構成したのは、新たな一歩だと言っても過言ではない。

複数モードが混在

 日経が「アクア」に関する記事を出したあと、筆者は他の新聞やテレビの報道をチェックしてみた。9月28日付の同紙報道が独自記事だったこともあり、各社は一斉に後追い記事を出した。ただ、この中には、筆者が懸念していた事柄が案の定そのまま掲載されていたのだ。

 賢明な読者ならば既にお気付きのはずだ。

 アクアの「40キロ」という数値のほか、トヨタの既存車種、あるいは他社の低燃費車が取り上げられ、記事中に「JC08モード」「10・15モード」の数字が混在していた。競合車種を燃費の観点から選ぼうとする読者を混乱させるのは明白だ。

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