旅人を“丸抱え”――オンライン旅行会社エクスペディア、強さの秘密郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年10月06日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 旅にはいくつものスタイルがある。

 「来週行け!」という出張旅行もあれば、ひと仕事終わって忘却へと飛び立つ自己解放の旅もある。青春の日々の放浪の旅も、シニアのじっくりプランを練るアニバーサリー旅行もある。旅は旅人の数だけ、違う顔を持っている。いずれの顔にも、国内へも国外へも応えるのが、世界最大のオンライン旅行会社エクスペディアである。

エクスペディア社長のスコット・ダーチスラグさん

 来日したエクスペディア社長のスコット・ダーチスラグさん。彼の笑顔にひかれて、つい幼稚な質問をした。「なぜクマ(エクスベア)がマスコットキャラクターなのですか?」

 「みんなクマが好きだからさ。嫌いな人っていないだろ」スコットさんはにこやかに笑った。質問は衝動的だったが、答えには含蓄があった。「みんながクマ好き」……そこにエクスペディア躍進の秘密がある。今回の彼の来日目的も“クマ”なのである。

 「来日の目的は3つあります。まず『クマの手』のローンチ(開始)キャンペーンのため。そして日本支社の経営レビュー、3つ目は震災後の日本市場の変化を感じるためです」

 2011年10月3日、中小の旅行会社向けの登録制の予約サイト「クマの手」がオープン。街角の代理店から、海外・国内14万軒のホテル予約ができる。オンライン予約に抵抗があるシニア層は、気心の知れた代理店で店頭予約がしたい。代理店はもっとホテルの選択肢がほしい。両者のニーズを合体させるのがクマの手である。

 代理店のメリットはホテルだけでなく、予約に伴う在庫管理や入出金の手間がないこと。今後ツアーや航空券も追加予定である。さらに予約手数料の10%も大きい。リーマンショック以来の市況悪化で、航空予約手数料は従来の10%から5%、そしてゼロへと近づいている。稼働率が落ちた宿泊施設からの収入も、競合代理店と呉越同舟でキツい。

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