中小企業の新卒採用が失敗し続ける理由(1/2 ページ)

» 2011年10月05日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 中小企業が、自社で扱っている商品を「今、有名企業や大企業が類似商品を売っているところだから」という理由で、しばらくの間は売らないということはありえない。大企業がまずその商品を売ってしまった後、残りのお客さまに対して遠慮がちに「ウチも似たようなモノを扱っていますので、いかがでしょうか?」などという営業をするはずがない。

 価格やスペックで差別化を図り、売り方や宣伝に工夫を凝らし、何とか大企業に伍していこうというのが普通の姿勢である。仕入れるにしても、「まず大企業さんに売ってください。ウチは、そのあとで買いに来ますから」ということなどありえない。

 そういう観点から見て、新卒採用について中小企業の人たちがよく口にすることに違和感がある。それは「大企業が終わってからでないと、採用が開始できない」というものだ。確かに昔から、安定を志向し、大企業に入ることを望む学生は多い。また、景気の低迷によってそのような学生の割合は、増えているようである。

 だからといって、中小企業が「どうせ、いい学生はウチには来てくれない」と考えて採用活動を遅らせるのは、「どうせ、いいお客は大企業からモノを買う。ウチの商品など買ってくれるはずはない」と決め付けて、何の営業努力もしないのと同じだ。

 反論は「同じタイミングで採用活動をしても、学生は大企業を志望しているので、採りたいと思った学生がいても全員持っていかれてしまう。同じ時期に採用活動をしても労力が無駄になるので、大企業が終わってからやるのは効率の観点から正しい。営業や仕入れとは違うのだ」ということだろう。

 が、営業や仕入れで通用しないような言いわけが、採用では通用するというのはオカシイ。「営業や仕入れではさまざまな工夫をし続けることが大切だが、新卒採用は学生が相手なので工夫をしても結果は同じで意味がない」という理屈が分からない。何より、自分たちのような会社は、大企業が採用しなかった学生からしか採用できないという、いかにもプライドのない前提に立っているのは、いかがなものだろうか。

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