ロイヤルカスタマーを獲得するラーメン二郎のサービス(2/2 ページ)

» 2011年10月04日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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サービスはお客と一緒に作り上げるもの

 サービスというのは製造業の製品と違って、お客と対面で「一緒に創り上げる」という大きな特徴があります。しかし、日本は製造業文化の価値観でサービスを提供してしまっている企業がまだまだ多いようです。

 どういうことかというと、「良いサービスは喜ばれる」という考え方です。この考え方で提供されたサービスは「余計なお世話」になってしまう可能性が非常に高いです。お客と一緒になってサービスを作る。お客から何かをいただいてサービスを作り上げる。そういった考え方が、お客とのつながりを強固なものにしてくれるのだと思います。

 ラーメン二郎においては、ラーメンという製品の提供ではなく、ラーメン二郎という世界自体を楽しんでいただくというサービスを提供しているのだと思います。その上で、お客と一緒に作るという「Togetherness」は極めて重要な考え方になります。下記は、ラーメン二郎でお客にしてもらっていることの一例です。

  • 独特の言葉で「カスタマイズ」を告げて、メニューを完成させる
  • 水は自分で注いでくる
  • 食べ終わった器はカウンターの上段に返す
  • 食後にカウンターを雑巾で拭く
  • 「品切れ」を行列に伝える

 このような「サービスの共創」を通して、ラーメン二郎自体を一緒に創り上げているんだという一体感や愛着を感じてもらえると、ファンやロイヤルカスタマーになってもらえる可能性がぐっと高まるのではないでしょうか。そうなると、このロイヤルカスタマーの方々が自ら「サービスの共創」における最大の貢献をしてくれていることになります。それが、「クチコミ」という名の営業活動です。

 実際、ラーメン二郎やスターバックスでは、自らの広報活動というのはほとんど行っていません。にもかかわらず、多くのお客が利用しているのは、まさにロイヤルカスタマーのクチコミの効果が絶大だということです。

 ということでこれまで見てきたように、「サービスはお客と一緒に創り上げる」という考え方で、今一度自社のサービスを見つめ直してみると、改善のポイントが見えてくるかもしれません。別の言い方をすれば、「良いサービスは喜ばれる」という価値観でサービスを提供してしまっていて、お客の事前期待に合っていない部分はないでしょうか。お客をサービスに巻き込むという考え方は、これからサービスがますます複雑化する中で、重要なポイントになるのではないでしょうか。(松井拓己)

 →松井拓己氏のバックナンバー

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