コラム
» 2011年10月04日 08時00分 UPDATE

ロイヤルカスタマーを獲得するラーメン二郎のサービス (1/2)

ラーメン二郎と言えば、知る人ぞ知る「毎日行列のできるラーメン店」で、ジロリアンと呼ばれるヘビーリピーターが非常に多いことで有名です。なぜラーメン二郎は、これほどまでにコアなファンを獲得できているのか。サービスサイエンスの視点からポイントを探ってみました。

[松井拓己,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:松井拓己(まつい・たくみ)

ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。


 前回の記事「スターバックスに学ぶ、顧客満足度向上のポイント」ではスターバックスに着目して「CS(顧客満足度)向上の努力の仕方」についてお話ししました。そこでは、スターバックスにはマニュアルがなく、「ビジョンの共有と権限移譲」によりサービスの質を高めていることに着目して、サービスのコンセプトに合ったCS向上の努力の仕方があることを紹介しました。

 そこで今回は、同じ飲食業でも少し毛色の違う「ラーメン二郎」のサービスに着目することで、ロイヤルカスタマーを獲得するためのポイントをサービスサイエンスの視点から考えてみたいと思います。

 ラーメン二郎のラーメンは、とにかくすごいボリュームで非常にインパクトがあります。メニューは「大」「小」の2種類で、「小」でも他店の大盛り以上の量です。そこに独特な言葉で注文をすると、野菜の量、味、背脂やニンニクのトッピングで「カスタマイズ」をすることができる。なかなか初心者には難しそうな雰囲気が漂っています。

 そして、そこで出される「驚き」のラーメンがクチコミを呼び、毎日開店から閉店まで行列が絶えないというのがラーメン二郎です。「他人に勧めたくなるサービス」に必要な要素が「大満足+驚きや感動」だということを考えると、ラーメンへの「驚き」がラーメン二郎の人気の理由の1つだということになりますが、クチコミに関しては別の回に譲ることとして、今回はその行列に並ぶお客の中に存在する「ジロリアン」と呼ばれるラーメン二郎のヘビーリピーターに着目してみたいと思います。

 「ジロリアン」の方々は三田本店の場合、わざわざ駅から10分以上も歩いてラーメン二郎に向かい、お店の前で1時間以上行列に並び、カウンターしかない狭い店内で、わずかなメニューを独特の言葉でカスタマイズし、出された驚きのラーメンを一生懸命食べて、わざわざ器をカウンターに戻して雑巾でテーブルまで拭いて帰っていく。そしてまた、数日も経たないうちにこれを繰り返すのです。

「ジロリアン」獲得の秘密

 実はラーメン二郎でも、前回の記事で触れたスターバックス同様に「ビジョンの共有と権限移譲」を行っているんです。その中に、リピーター獲得のヒントが隠されています。ビジョンとして共有されている社訓がこちらです。

社訓

一、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、週末は釣り、ゴルフ、写経

二、世のため人のため社会のため

三、Love & Peace & Togetherness

四、ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気

五、味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ、家庭の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国の乱れ、国の乱れは宇宙の乱れ

六、ニンニク入れますか?

 面白いですね。スターバックスのものと比べると、ラーメン二郎らしいユーモアを感じます。

 この社訓(ビジョン)で今回着目したいのは、この面白い社訓の「表現」と「三、Love & Peace & Togetherness」です。この2点からどんなことが見えてくるかというと、「ジロリアン」の存在です。

 つまり、この社訓はジロリアンに見せることを前提に書かれているように思うのです。その中に「Togetherness」という言葉が入っている。つまり、「ラーメン二郎」というサービスは、サービス提供者である「店主」とお客である「ジロリアンの方」とで共創していきましょうというメッセージを強く感じるのです。

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