避難所から仮設住宅へ――被災者の姿を追う東日本大震災ルポ・被災地を歩く(4/5 ページ)

» 2011年09月30日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

ようやく当たった仮設住宅

 大震災から半年が経とうとしていた9月10日夜。石巻市の旧河南町にある仮設住宅に住む廣瀬文晃さんを訪れた。

 「8月の最終日曜日に引っ越していた。数えきれないほどの抽選をしたが、なかなか当たらなかったんです。(元々住んでいた地域の)近くに当たればな、と思っていたんですよ。子どもの学校のこともありますし。まさか、お盆を過ぎるとは思っていなかったですね」

 と文晃さんは話している。妻の亜耶子さんもこう語った。

 「ここは学校までクルマで15分かかります。子どもは中1と小6なので、このタイミングで転校は中途半端だな、とも感じます。買い物も不便で、(市中心部の)蛇田(クルマで10〜15分ほど)まで行く時はまとめ買いをしています」

石巻市の仮設住宅に住む廣瀬さん夫婦

 7月に廣瀬さん一家が避難していた青葉中学校体育館に訪れたが、廣瀬さんたちは仕事などでいなかった。電話で話した時には「仕事が見つかったんですよ」と言っていた。その仕事はいつごろ見つかったのだろう。

 「5月ごろですね。昔、働いていた会社の人が電話をくれたんです。建築作業の仕事ですが、復興の仕事で塩竈市に通っている」

 亜耶子さんは、文晃さんが海の仕事に就くことを嫌がっていた。仕事中に津波に飲まれたからだ。そのため、建築作業と聞いた時は一時ホッとしたが、現場が海の近くということで、心配が絶えない。

 「震災前、夫の仕事のことは興味がなかったんですが、今は現場が海の近くかどうかは気になります。地震があるとすぐに電話してしまいます。電話に出ないと焦ってしまいます」

 仕事があるだけまだよいのかもしれないが、この建築作業は復興関連だ。そのため、文晃さんは「この仕事がいつまであるのか」と将来に不安を持っている。

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