コラム
» 2011年09月29日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:食事をし、交通費をもらう……“ごっつぁん記者”なんていらない (1/2)

「あご足付き」という言葉がある。スポンサーから食事や交通費などを提供される“おいしい仕事”を指す隠語だが、実はマスコミでも使われている。しかし、この「あご足付き取材」を全廃しなければ、国民からの信頼は得られないのではないだろうか。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 「あご足付き」なる言葉をご存じだろうか? 本来は、芸能人などが地方都市での営業に赴く際、「あご=食事」「足=交通費、移動手段」をスポンサーやタニマチから提供される“おいしい仕事”を指す芸能界の隠語だ。この言葉、実はマスコミ業界でも使われている。企業が用意したハイヤーやグリーン車に乗って工場見学に行き、おいしい食事がすべてコミコミで用意されている出張取材なのだ。マスコミ不振が高まる中、「あご足付き取材」を全廃しなければ一般読者や視聴者の信頼を取り戻すことはできない。

今年は誰が行く?

 「今年のアレ、誰が行くの?」

 筆者が通信社に勤務していたころ、毎年特定の時期になるとある企業のあご足取材が話題となっていた。ある企業とは、多数の食品や日用品を販売する外資系企業。多様な商品ラインアップを有する一方、独特な販売手法を巡って内外でたびたび訴訟が起こっていた企業でもある。

 この外資系企業は、海外各地にある自社工場に大手メディアのデスクや編集委員など幹部クラスを招き、リゾート地訪問など豪華な取材旅行をセットアップすることで知られていた。

 大半の工場見学、あるいは新製品の取材では、企業側には最新設備や新製品を紹介してもらいたいという思惑がある。つまり、あご足付き取材のあとは、暗に記事を書くようにとの力が記者に働くのだ。多額経費をかけた以上、記事というお返しがなければ割にあわないからだ。

 一方、先に触れた企業については「なにも言われない」(大手紙幹部)。先の項で、「デスクや編集委員など幹部クラス」と触れたのは、この点がミソなのだ。

 つまり、第一線の現場記者ではなく、あえて幹部を引き連れ、企業側との関係を密にする。消費者とのトラブルが発生した際、デスクが現場記者の原稿に圧力をかけてくれるように頼む、いわば“保険”としていたのだ。

 筆者の古巣では、社内からの批判が相次ぎ、取材ツアーへの参加をやめた。しかし、従前は豪華な食事や高級ホテルへの宿泊に惹かれた(もちろん料金はタダ)“ごっつぁん記者”が嬉々として同行していたのは紛れもない事実だ。

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