福島の前知事が、原子力“先進国”の内情を語る(1/3 ページ)

» 2011年09月27日 08時00分 公開
[産経新聞]

 「『ムラ』の人々はいつも『安全だ』と言い続けてきたが、福島が裏切られたのは初めてではない」

 そう語り始めたのは、昭和63年から平成18年まで福島県知事を5期18年務めた佐藤栄佐久(72)。汚職事件の責任をとって知事を辞職し、政治から距離を置く立場になってすでに5年がたつ。原子力の恩恵にあずかった地元の首長が言うな――という声も出るかもしれないが、かつて自らがその一角を担っていた原子力“先進国”の内情を振り返った。


 佐藤は在任中、原子力発電をめぐって幾度も「煮え湯」を飲まされた経験から、東京電力福島第1原発の事故を「起こるべくして起きた人災」と言い切る。「ムラ」とは、原子力に携わる人たちの閉鎖的社会のことを指す。

 MOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を一般の原発で燃やすプルサーマル計画など、原子力政策で国や東電と対立を演じてきた佐藤。「闘う知事」と評されたこともある。

 しかし、佐藤は「知事選にあたって反原発を掲げたことはなかった」と話す。むしろ、第1原発(双葉町、大熊町)と第2原発(富岡町、楢葉町)が並ぶ双葉郡の地域振興を訴えるなかで、「過疎地域の人口が1万人くらい増え、経済面で良い面がある」と考えていた。

 その佐藤も知事就任後は、東電と対立する場面を繰り返した。背景には、昭和63年の就任後、間もなく抱いたある種の「違和感」の存在があるのだという。

会談する佐藤栄佐久・福島県知事(左)と勝俣恒久・東京電力社長(右)=2003年7月10日、福島県庁(撮影・財満朝則)
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