コラム
» 2011年09月27日 08時00分 UPDATE

なぜ企業はわざわざ埋もれてしまう新卒採用サイトに出稿するのか

企業が新卒採用サイトに出稿する時、「掲載している会社の数が多いこと」「有名企業や大企業がたくさん出していること」が基準になっている場合があるという筆者。なぜ、わざわざ埋もれてしまうようなサイトに出稿するのかと問いかける。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 新卒の採用はすっかりWebに移行しているので、どのような採用サイトを選ぶのかは企業にとって重要なポイントとなっている。ところが、どんな基準で採用サイトを選ぶのかをうかがうと、その話に首をかしげてしまうことが少なくない。

 例えば、「掲載している会社の数が多いこと」を基準にしている会社がある。掲載社数が6000社のサイトと7000社のサイトであれば、後者の社数が多い方を選ぶらしい。「出稿している会社の数が多い方が信用が置ける」「より多くの会社が支持しているサイトの方が安心だ」といった発想である。

 普段、個人としてモノを買う時に、売れ筋にひかれるのと同じように考える(ランキングやほかの人はどうしているかで決める)のだろうと思う。

 だが、この発想は登録している学生の数が似たようなものであれば、掲載社数が少ないほうが自社への応募者が多くなる、という当たり前のことを無視している。仮に、登録学生数40万人が平均20社にエントリー(応募)したとすると、計800万エントリーになるが、これを掲載社数6000社で分け合えば800万エントリー÷6000社=1300人のエントリーが獲得できるのに対して、7000社のサイトでは1100名にとどまり、約200人の差が生じる。

 エントリーで200人の差があると、接触できる学生の数では100人近い差になり、採用数にして2〜3人も違ってくる可能性がある。社数が多い方のサイトに出すのは、わざわざ目立たないところに埋もれに行くようなものなのだ。ネットショップをどこかに出店しようという会社が、「出している店の数が多いから」という理由で楽天市場に出すケースは多いが、結局は埋もれてしまって目立たず、売れ行き不振で撤退してしまうというのと同じ話である。

有名企業と一緒に掲載された方がイメージがいい!?

 ほかに「有名企業や大企業がたくさん出していること」「学生に人気の業界が、多く掲載しているから」というのも理由に上がる。一覧で企業が表示される時に、有名人気企業が並んでいるところに自社も掲載されているほうがイメージがいい、不人気業界の会社と一緒に一覧で出てくるのは嫌だ、と考えるのだろう。

 これも見事に逆だ。有名人気企業があればあるほど、そちらにエントリーが集中し、自社へのエントリーは減るのである。不人気業界の中にあったほうが、自社へのエントリーは増えるだろう。リアルの世界では、人気のお店の横に出店して、その集客力のおこぼれにあずかろうというコバンザメ戦略もあるが、ネットではそのようなことは起こらない。

 ましてや、掲載社数の多い方、有名人気企業が多く掲載されている方のサイトが、値段が高いのだからオモシロイ。効果がある方が値段が高いのなら理解できるが、逆になっているのだから、いかにサイトの選び方がおかしいかというものだ。掲載社数の多い方のサイトの営業力がスゴイということだろうか。

 真剣に新卒採用の目標を達成しようと思うなら、誰だってこれくらいの理屈には気付くはずだ。それなのに、社数が多い方、有名人気企業が多い方のサイトを選ぶというのは、新卒採用という仕事や目標が、経営や人事部の中でいかに軽くなっているかを表しているとも言えるだろう。予定の採用数を達成できなくても経営への影響はほとんどないし、学生のレベルが低かったことをその理由に挙げればよい、といった雰囲気なのだろう。

 そもそも、採用という仕事は、営業のように自社内で業績を比較されることがないから、失敗が失敗だと分からないことも、こうなっている理由の1つである。(川口雅裕)

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