被災地の夏、避難所の夏東日本大震災ルポ・被災地を歩く(4/4 ページ)

» 2011年09月19日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]
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自衛隊の入浴支援が終了に

 一方、青葉中の校庭には、自衛隊の第18全般支援大隊(仙台)が入浴支援に入っていた。同大隊が提供している施設は、アメリカ軍の「Operation TOMODACHI(トモダチ作戦)」によって提供されたものだ。しかし、この取材をした翌日、入浴支援を終えた。宮城県の村井嘉浩知事は、7月27日の災害対策本部の会議で、8月1日で自衛隊の撤収を要請した。「支援を民間に引き継ぐ」のが理由だ。

 避難所の本部によると、避難所の入浴支援は、今後、入浴施設まで、週3回の巡回バスが送迎する。バスは無料で利用でき、被災者は無料で入浴施設を利用できる。バス以外の手段では、り災証明を提出することで無料になる。しかし、真夏はこれまで以上に汗をかく時期だ。自衛隊の入浴支援が撤収するのは、被災者にとっては、不快ではないのか。

入浴支援にあたる自衛隊員

 瀬川一明 二等陸尉はこう話す。「避難所のほか、近隣住民でお風呂が入れない人たちを支援してきた。1日延べ100人くらいだ。男女比は半々。5月当初に最初に来た時、すごく明るい女性がいた。話をすると、ご家族を全員亡くされた、という。『お互い、頑張りましょう』としか言えなかった。世間話をするようになり、『ご苦労様です』と声をかけてくれて、こちらも励みになった」

 この時期に撤収することについても聞いていたが「日程は行政で判断するものだが、昨今、まだ地震が多い。ここで撤退しても、何かあれば、必ず支援をしていきたい。我々としても気が緩むことはない」と話していた。

 東北地方は夏が終わるのが早い。9月半ばを過ぎればどんどん涼しくなっていく。堤幼児保育園の芳賀副園長は「これまで、震災があった3月からはだんだん日が長くなり、『希望』という明るいイメージと重なっていたと思う。しかしお盆を過ぎると、東北地方は日が短くなり、風も波も変わる。寂しさを増す」と話していた。

 今後、被災地に必要な支援は何か。それは季節とともに変わっていく。

渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール

book 『3.11 絆のメッセージ』

 1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。

 著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「悩み、もがき。それでも...」を刊行中。

 5月、被災地の人々の生の声を集めた『3.11 絆のメッセージ』(被災地復興支援プロジェクト)を出版した。


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