被災地の夏、避難所の夏東日本大震災ルポ・被災地を歩く(2/4 ページ)

» 2011年09月19日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

 しかし実際には、8月に入るとハエは減っていた。石巻市門脇の青葉中学校では、避難所は校舎と体育館に別れている。震災以来、何度も足を運んだ同校へ、7月26日にも訪れてみた。体育館では少しハエが飛び交っていたが、思ったよりも少ない。

 避難所の本部ではハエ取り紙を体育館の天井から吊り下げているが、つかまっているハエはほとんどいない。この時期は、飛び交っているハエが少ないという。

青葉中学校。体育館と校舎を避難所にしている

 ハエ対策としては、酢と酒と砂糖を混ぜたものをペットボトルに入れている。臭いに誘われて、ハエがやってくるという仕掛けだ。ハエ取り紙も天井から吊り下げている。しかし、ハエが少ない。

 岩手県大槌町吉里吉里の堤幼児保育園でもハエに悩まされた時期があった。同園については、共著『3.11 絆のメッセージ』(東京書店)でも取り上げている。芳賀カンナ副園長は「今年はハエが多くて、ハエ取りリボンが真っ黒になることもあった」と話していたが、7月28日に同園を訪れたときには、気になるほどハエはいなかった。

 この時期、被災地を取材していたフリーライターの島田健弘さんも、宮城県気仙沼市内でハエの取材をしようとしていた。しかし、漁港付近でもほとんどハエを見なかったという。島田さんの取材で分かったこととして、6月頃までは、ハエが多かったという。ハエ対策のペットボトルを活用していたが、罠にかかったハエが腐り、そこからウジが湧いていたこともあった。しかし、その後は気温が高すぎると、ハエが活動的でなくなったという。

 そういえば、「五月蝿い(うるさい)」は、5月の蠅(ハエ)と書く。5月のハエは特にうるさいことからの当て字になっている。旧暦5月頃の気温が、ハエが活動するのに適している、とのことだ。

避難所の子どもたち

 そんな蒸し暑い中、51世帯126人が青葉中学校に避難していた(7月26日現在)。避難所では扇風機が活躍していた。仮設住宅にはエアコンもついていて、抽選に当たった人は、気温の面では快適に過ごせる。仮設住宅への移動がスムーズに行けば、8月か9月には閉鎖する予定だ。

 小中学生が遊んでいたので話を聞いてみた。「昨日から仮設に入ったんです」という菅原龍星君(小学校5年生)が遊びにやって来ていた。話をしていると、震災発生時、自宅はどうだったかを教えてくれた。

避難所の子どもたち

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