――セリーグとパリーグの違いについてですが、ちまたで言われるような強力なリーダーの影響というのはあるのでしょうか。
井上 昔、読売巨人が球界を支えていたことは事実だと思いますし、真剣にプロ野球に取り組んでいるのも事実だと思います。そういう意味で読売巨人の影響力は非常に大きかったのですが、楽天やソフトバンクが入ってパリーグが活性化したため、今は12球団がかなり平等な立場で意思決定をするようになりました。
先ほど、希望枠の廃止という話をしました。希望枠を廃止する時、いくつかの球団が反対し、残りの球団が賛成しました。今、意思決定においてはパリーグの6球団はだいたいまとまっていて、セリーグの数球団がパリーグと同意見、残りの球団が反対ということで行われていることが多くなっています。
――MLBではネット放送の収入が各球団に分配されるという話でした。パリーグの試合は今、Yahoo!などで配信していますが、その収入は平等に分配されているのですか。
井上 パリーグは別会社に委託してリーグ統一で配信しているのですが、収入は6球団平等に分配しています。球団によって全体の売り上げが多い球団も少ない球団もあるのですが、現在のところネット放送の収入は平等に分配しています。
――パリーグの6球団は一致してビジネスをやろうとしている印象があるのですが、セリーグと結び付いてやろうということはないのでしょうか。
井上 基本的にはパリーグ6球団でやるよりは、セパ両リーグ12球団でやった方が、何をするにしても売り上げが2〜3倍になります。パリーグとセリーグを足すと、パリーグだけでやる場合の4〜10倍くらいの効果になるんですね。だから、「12球団共同の事業会社を作ろう」というのがパリーグ側の提案です。
しかし、どうしてもセリーグ側の方でうまく調整がつかない。12球団で調整が付かないからやらないという選択肢もあります。ただ、12球団で調整が付かないならまず6球団でやってみよう、6球団でやってみて成果を出した後に残り6球団を巻き込むという選択肢もあるということで、とりあえずやってみることになりました。できれば12球団でやりたくて、もし12球団でまとまれたら6球団の枠組みは解消する予定です。
平田 メジャーリーグの売り上げが15年で4倍になった背景にはNHKが放映権を払っているということもあると思うのですが、NHKがメジャーリーグを中継して、日本のプロ野球をあまり放送しないことについてどうお考えですか。
井上 オーナー会議でも「NHKに行って、もっと日本のプロ野球を放送するように交渉してこい」という話はよく出てきています。実際交渉に行くこともあるのですが、うまく成立しません。ただ、MLBのことはMLBのことで、NPBでしっかり稼ぐことが大事なので、NPBにはまだ稼ぐ余地があるので、まずはNPBできちんとした事業を確立して、中央組織でしっかり稼ぐ構造を作ることに注力するべきだと認識しています。
――横浜球団をTBSが売却するという話がありましたが、球場と横浜球団の契約は売却することによってなくなるのでしょうか。また、仮に静岡や新潟に移転したとして、横浜が成功する見込みはあるのでしょうか。
井上 球場と球団の契約なので、株主が変わっても契約内容が変わる理由はありません。
静岡や新潟でビジネスを成立させるのは、人口状況からすると非常に難しいと思います。ただ、よく楽天野球団でも議論するのですが、楽天野球団に横浜球団の運営をやらせてくれたら大幅な黒字になるだろうとはみんなで言っているんです。
平田 なぜですか。
井上 今、パリーグが元気になったので、みなさんはパリーグとセリーグは結構拮抗(きっこう)していると思われるかもしれません。しかし、市場規模という意味では、パリーグ球団の所在地と、セリーグ球団の所在地とでは格段の差があります。たまたまセリーグの球団がちょっと眠っているので、パリーグが目立っているだけです。
よく見ると、関西地区は阪神がほとんどをおさえていて、ちょっとオリックスがある。中京地区は中日が誰も競争者がいなくて、あの大人数の地域をおさえている。東京や北関東は読売巨人がおさえている。ではパリーグが何をおさえているかと言うと、九州にソフトバンク、仙台に楽天、北海道に日本ハム、埼玉の端の方に西武、千葉にロッテと、市場規模で見ると小さいところばかりなわけです。
横浜は市場規模が非常に大きいエリアであり、かつ地域性を出すこともできるんです。そういう意味で、横浜は市場として非常にいいという評価をしているのです。
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