スマートフォン・タブレット端末が駆逐する「ある市場」神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2011年09月14日 10時21分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(COTY、2009年まで)、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを務める。

トヨタ自動車の豊田章男社長ほか、キーパーソンへのインタビューを中心にまとめた『TOYOTAビジネス革命 ユーザー・ディーラー・メーカーをつなぐ究極のかんばん方式』、本連載(時事日想)とITmedia プロフェッショナルモバイルに執筆した記事をまとめた『次世代モバイルストラテジー』(いずれもソフトバンククリエイティブ)も好評発売中。


 最近、Appleの「Apple Store」で買い物をして、"あること"に気づいた人はいないだろうか。商品を手に取り、店舗にあるべきものを探す。しかし、それがないのだ。

 レジスターである。

 今のApple Storeには一般的な店舗でおなじみのレジスターがない。代わりに使われているのが、iPhone/iPod touchである。販売スタッフに購入の意思を伝えると、懐から大きめのジャケットにくるまれたiPhoneを取り出す。このジャケットの部分がiPhone/iPod touchの周辺機器になっており、一次元バーコード(商品バーコード)の読み取り機能やクレジットカードの決済端末機能を内包しているのだ。また、レシートを印刷するプリンターや机の中に埋め込まれたキャッシュドロワーともBluetoothで連携。商品バーコードによる管理、現金決済、クレジットカード決済といったPOSレジに求められる機能がすべて、iPhone+周辺機器で実現している。

じわりと広がるスマートデバイスの業務用専用機化

 iPhoneやiPadといったスマートフォン/タブレット端末を、レジスターや受発注管理用の業務用端末として使う。こうした動きは、Apple Storeだけで起きているわけではない。

 例えばJR九州では、九州新幹線「つばめ」の開業にあわせてオープンした「つばめカフェ」(JR博多駅構内)において、iPadをレジスターとして使っている。iPadの画面上で販売する商品や顧客属性のデータを入力するというものだ。筆者も視察し、現場スタッフの声を聞いたが、iPad+アプリで構築したレジ環境は、たくさんのハードウェアキーが並ぶ業務用のレジスター専用機よりも「必要なボタンだけが状況に応じて画面上に表示されるため、押し間違いが少ない。直感的で分かりやすい」と好評だった。また、すべての機能がソフトウェアで実現されているため、商品の追加・変更などにも対応しやすい。そして何より、汎用的なスマートフォンやタブレット端末を使ったPOSレジのソリューションは、小〜中規模の導入・運用管理だと、専用の業務用レジスターを開発・導入するよりも安上がりになるのだという。

九州新幹線「つばめ」の開業にあわせてオープンした「つばめカフェ」。iPadをレジスター代わりに使っている

 大手スーパーやコンビニエンスストアのように、複雑なシステムを大規模導入・一括管理するとなれば話は別だが、そうでない場合は、汎用機であるスマートフォン/タブレット端末といったスマートデバイスをハードウェアとして使い、アプリとソリューションサービスを組み合わせて「業務用専用機の代わり」として使った方が、開発・運用・コスト面でメリットとなるケースが多い。このような流れにあわせて、様々な商品が登場している。

iPod touchをハンディに使う。ソフトをうまく作れば、ユーザーインタフェースも分かりやすい(POS3の例)

 例えば、iPhone向けのソリューションでは、フライトシステムコンサルティングの「ペイメント・マイスター」や「POSマイスター」(参照リンク)アスタリスクのPOSシステム「Salasee」(参照リンク)などがあるし、iPad向けではフォウカスの総合POSシステム「POS3(ポス・キューブ)」(参照リンク)や、ユビレジの「Ubiregi」(参照リンク)などがある。また今後は、Androidスマートフォンやタブレット端末向けのソリューションも増えていくだろう。

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