コラム
» 2011年09月14日 08時00分 UPDATE

なぜ管理部門は“指示待ち”になるのか? (1/2)

無理に何か良からぬことを探し出し、実は大したことではないのに大変なことが起こったようにして、その対応を一生懸命にやろうとする。そんな人は管理部門にいないだろうか?

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 人事部の労務管理が、非常に大変になってきている。ここ20年くらいを振り返ると、人事部の業務で楽になったのは、ITの恩恵による給与計算くらいだ。若手の退職が増えたり、メンタルヘルス不全者が出てきたり、コンプライアンス上の問題が起こったり……。

 経営からは「残業削減策を考えろ」と言われるし、「モチベーションが低い、マネジメント力が問題だ」と言われる。現場からも「採用してくる社員のレベルが低い」とか、処遇や評価などで文句ばかり言われる一方で、管理部門のスリム化によって人数も少なくなっているので、これは大変である。

 多くの人事部は、このようになった理由を「世の中が大きく変化したからだ」と考えているように見える。社会が複雑化し、情報化し、成長が止まって閉塞感が生まれ、人々の考え方も変わってきた結果、このようになってしまったわけで、仕方ないことだととらえている。

 一点だけ、労働規制がほぼ変わらない中で雇用形態だけが多様化し、その手続きや評価が複雑で大変になっている部分は仕方がないのだろうが、このような状況になった最大の理由は、人事部自身が組織開発と人材育成を怠ってきたことだろうと思う。良質な職場環境やコミュニケーションを創ること、相互理解やチームワークの強化、様々な知識や技術や教養の習得、経験と振り返りの豊富な蓄積といったことを、継続的に意図を持っては、やってこなかったことが、現在の人事部の仕事が大変になっている理由だろう。

評価されないから取り組まない

 しかし、人事部がこれらに取り組まなかったのには原因がある。それは、組織開発や人材育成に熱心に取り組んでも、大して評価されないからだ。

 例えば、コミュニケーション改革のために何かを作ったり、仕掛けたり、イベントや研修をしたりしても、急にそれで会社がもうかるわけではないし、研修で何かの知識やスキルを得た人が急に業績が良くなるわけでもない。どちらかと言えば、経営からは「コストをかけたのに、何が変わったか分らない」と見られてしまう。現場からも「何か人事が面倒なことを始めたようだ」といった反応が出てくる。

 逆に、現在のように放っておいても、色々なことが起こるのでとても忙しいという状況になったら、「現場で起こっていることに、少人数で対応してくれていて大変なのだから、評価しよう」ということになるから面白い。ただしこれは何も、人事部に限ったことではない。

 例えば、法務部であれば問題やトラブルを多く抱えれば抱えるほど、評価は高くなる。トラブルが起こらないようにするために、現場に対して法律や手続きの周知徹底を図るような動きをするより、現場で事件がたくさん勃発する方が頑張っていると評価される。

 会社の業績が順調な時よりも、経営が危機的になったほうが財務部も経理部もあれこれ忙しいから評価される。広報でも、マスコミからあれこれ厳しく突っ込まれるような事件が起こった方が評価は良くなる。何もなければ、資料を発表したり、メディアと付き合ったりしているだけで、「彼らは何をやっているのか……」と言われかねない部署だ。

 平時に行動を起こすと、「“コストセンター”が余計なことをやっている」と揶揄されるが、コトが起これば「頑張っている。大変そうだ」と評価されるのであれば、基本的には何もせず、何か起こった時に頑張ったほうが得だと考えるだろう。先々を見すえた戦略行動などは、コストを使って効果がなかったなどと言われて評価が下がるかもしれないので、自分たちにとってリスクだ。

 こんな発想に染まってしまって、事件が起こった時だけ急に生き生きとしてくる管理部門の人たちはいないだろうか。これが行き過ぎると、無理に何か良からぬことを探し出し、実は大したことではないのに大変なことが起こったようにして、その対応を一生懸命にやろうとするようになる。

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