「この国の持てる力の全てを結集しようではありませんか」――野田首相所信表明演説全文(4/4 ページ)

» 2011年09月13日 20時19分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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経済連携協定の締結を戦略的に追求

野田 我が国を取り巻く世界の情勢は、大震災後も日々、変動し続けています。新興国の存在感が増し、多極化が進行する新たな時代の呼びかけに対して、我が国の外交もしっかりと応えていかなければなりません。

 我が国を取り巻く安全保障環境も不透明性を増しています。そうした中で、地域の平和や安定を図り、国民の安全を確保すべく、平時からいかなる危機にも迅速に対応する体制を作ることは、国として当然に果たすべき責務です。昨年末に策定した新防衛大綱(参照リンク)に従い、即応性、機動性等を備えた動的防衛力を構築し、新たな安全保障環境に対応していきます。

 日米同盟は我が国の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界の安定と繁栄のための公共財であることに変わりはありません。

 半世紀を越える長きにわたり深められてきた日米同盟関係は、大震災でのトモダチ作戦を始め、改めてその意義を確認することができました。首脳同士の信頼関係を早期に構築するとともに、安全保障、経済、文化、人材交流を中心に、さまざまなレベルでの協力を強化し、21世紀にふさわしい同盟関係に深化・発展させていきます。

 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄のみなさまに誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます。

 今後とも世界の成長センターとして期待できるアジア太平洋地域とは、引き続き政治・経済面での関係を強化することはもちろん、文化面での交流も深め、同じ地域に生きる者同士として信頼を醸成し、関係強化に努めます。

 日中関係では、来年の国交正常化40周年を見すえて、幅広い分野で具体的な協力を推進し、中国が国際社会の責任ある一員として、より一層の透明性を持って適切な役割を果たすよう求めながら、戦略的互恵関係を深めます。

 日韓関係については、未来志向の新たな100年に向けて、一層の関係強化を図ります。北朝鮮との関係では、関係国と連携しつつ、日朝平壌宣言(参照リンク)に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して、国交正常化を追求します。拉致問題については、我が国の主権に関わる重大な問題であり、国の責任において、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします。

 日露関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組むとともに、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に努めます。

 多極化する世界において、各国との確かな絆を育んでいくためには、世界共通の課題の解決にともに挑戦する大きな志が必要です。こうした志ある絆の輪を、官民のさまざまな主体が複層的に広げていかなければなりません。

 大震災からの復旧・復興も、そうした取り組みの一例です。被災地には、世界各国から温かい支援が数限りなく寄せられました。これは、戦後の我が国による国際社会への貢献と信頼の大きな果実とも言えるものです。我が国は唯一の被ばく国であり、未曽有の大震災の被災国でもあります。各国の先頭に立って核軍縮・核不拡散を訴え続けるとともに、原子力安全や防災分野における教訓や知見を他国と共有し、世界への恩返しをしていかなければなりません。

 国と国との結び付きを経済面で強化する取り組みが経済連携です。これは、世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためにも欠かせない課題です。包括的経済連携に関する基本方針(参照リンク)に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求します。具体的には、日韓・日豪交渉を推進し、日EU、日中韓の早期交渉開始を目指すとともに、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への交渉参加について、しっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 資源・エネルギーや食料の安定供給の確保などの面でも、経済外交を積極的に進めます。また、途上国支援、気候変動に関する国際交渉への対応、中東・北アフリカ情勢への対応や、ぜい弱国家対策といった諸課題にも、我が国として積極的に貢献していきます。

議論を通じて合意を目指す

野田 政治とは、相反する利害や価値観を調整しながら、粘り強く現実的な解決策を導き出す営みです。議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にあります。

 私たちはすでに前政権の下で、対話の積み重ねによって、解決策を見出してきました。ねじれ国会の制約は、議論を通じて合意を目指すという、立法府が本来あるべき姿に立ち返る好機でもあります。

 ここにお集まりの国民を代表する国会議員のみなさま。そして国民のみなさま。改めて申し上げます。この歴史的な国難から日本を再生していくため、この国の持てる力のすべてを結集しようではありませんか。閣僚は一丸となって職責を果たす。官僚は専門家として持てる力を最大限に発揮する。与野党は、徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出す。政府も企業も個人も、すべての国民が心を合わせて、力を合わせて、この危機に立ち向かおうではありませんか。

 私はこの内閣の先頭に立ち、ひとりひとりの国民の声に、心の叫びに、真摯に耳を澄まします。正心誠意、行動します。ただ国民のためを思い、目の前の危機の克服と宿年の課題の解決のために、愚直に一歩一歩、粘り強く、全力で取り組んでいく覚悟です。

 みなさまのご理解とご協力を改めてお願いして、私の所信の表明といたします。

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