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» 2011年09月13日 20時19分 UPDATE

「この国の持てる力の全てを結集しようではありませんか」――野田首相所信表明演説全文 (1/4)

野田首相は9月13日、衆参両院本会議で就任後初の所信表明演説を行った。東日本大震災の復旧・復興と日本経済の立て直しを政権の最優先課題として提示。ねじれ国会の中、議論を通じて合意を目指す方向性を示した。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 野田首相は9月13日、衆参両院本会議で就任後初の所信表明演説を行った。東日本大震災の復旧・復興と日本経済の立て直しを政権の最優先課題として提示。同時に、世代間の公平性を実感できるような社会保障制度の構築、外交面では経済連携協定の締結を進めることを表明した。

 演説の最後では「この歴史的な国難から日本を再生していくため、この国の持てる力のすべてを結集しようではありませんか」と訴え、衆参で与野党が逆転するねじれ国会の中、議論を通じて合意を目指す方向性を示した。所信表明演説の模様を、首相官邸公式Webサイトの動画(参照リンク)をもとに詳しくお伝えする。

ah_noda1.jpg 野田佳彦首相(出典:衆議院TV)

政治に求められるのは「正心誠意」

野田 第178回国会の開会に当たり、東日本大震災、そしてその後も相次いだ集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。また、被害に遭われ、不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の方々に、改めてお見舞いを申し上げます。

 この度、私は内閣総理大臣に任命されました。政治に求められるのは、いつの世も「正心誠意」の4文字があるのみです。意を誠にして、心を正す。私は国民のみなさまの声に耳を傾けながら、自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です。まずは連立与党である国民新党始め、各党、各会派、そして国民のみなさまのご理解とご協力を切にお願い申し上げます。

 あの3月11日から、はや半年の歳月を経ました。多くの命と穏やかな故郷での暮らしを奪った大震災の爪跡は、いまだ深く被災地に刻まれたままです。そして大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故は、被災地のみならず、日本全国に甚大な影響を与えています。日本の経済社会が長年抱えてきた課題は残されたまま、大震災により新たに解決が迫られる課題が重くのしかかっています。

 この国難のただ中を生きる私たちが、決して忘れてはならないものがあります。それは、大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。

 (宮城県)南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼びかけ続けた遠藤未希さん。防災庁舎の無線機から流れる彼女の声に勇気付けられ、救われた命が数多くありました。恐怖に声を震わせながらも、最後まで呼びかけをやめなかった彼女は、津波に飲まれ、帰らぬ人となりました。生きておられれば、今月、結婚式を迎えるはずでした。

 被災地の至るところで、自らの命さえ顧みず、使命感を貫き、他者をいたわる人間同士の深い絆がありました。彼女たちが身をもって示した、危機の中で公に尽くす覚悟。そして、互いに助け合いながら、寡黙に困難を耐えた数多くの被災者の方々。日本人として生きていく誇りと明日への希望が、ここに見出せるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは、原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿です。先週、私は原子力災害対策本部長として、福島第1原発の敷地内に入りました。2000人を超える方々がマスクと防護服に身を包み、被ばくと熱中症の危険にさらされながら、事故収束のために黙々と作業を続けています。

 そして大震災や豪雨の被災地では、自らが被災者の立場にありながらも、人命救助や復旧、除染活動の先頭に立ち、住民に向き合い続ける自治体職員の方々がいます。ご家族を亡くされた痛みを抱きながら、豪雨対策の陣頭指揮をとり続ける(和歌山県)那智勝浦町の寺本真一町長もその1人です。

 今この瞬間にも、原発事故や災害との戦いは続いています。さまざまな現場での献身的な作業の積み重ねによって、日本の今と未来は支えられています。私たちは激励と感謝の念とともに、こうした人々にもっと思いをいたす必要があるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは被災者、とりわけ福島の方々の抱く故郷への思いです。多くの被災地が復興に向けた歩みを始める中、依然として先行きが見えず、見えない放射線の不安と格闘している原発周辺地域の方々の思いを福島の高校生たちが教えてくれています。

 「福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢です」

 これは先月、福島で開催された全国高校総合文化祭で、福島の高校生たちが演じた創作劇の中の言葉です。悲しみや怒り、不安やいらだち、あきらめや無力感といった感情を乗り越えて、明日に向かって一歩を踏み出す力強さがあふれています。こうした若い情熱の中に、被災地と福島の復興を確信できるのではないでしょうか。

【ふくしま総文】構成劇「ふくしまからのメッセージ」その1

 今般、被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚(鉢呂吉雄前経済産業大臣)が出たことは、誠に残念でなりません。失われた信頼を取り戻すためにも、内閣が一丸となって、原発事故の収束と被災者支援に邁進することを改めてお誓いいたします。

 大震災後も世界は歩みを止めていません。そして、日本への視線も日に日に厳しく変化しています。日本人の気高い精神を賞賛する声は、この国の政治に向けられる厳しい見方にかき消されつつあります。「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」を「日本化する」と表現して、揶揄(やゆ)する海外の論調があります。これまで積み上げてきた国家の信用が今、危機にひんしています。

 私たちは、厳しい現実を受け止めなければなりません。そして克服しなければなりません。目の前の危機を乗り越え、国民の生活を守り、希望と誇りある日本を再生するために、今こそ、行政府も、立法府も、それぞれの役割を果たすべき時です。

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