世界経済がまた厳しく……野田首相を取り巻く環境藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年09月12日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 米国のオバマ大統領は、9月8日、米連邦議会上下両院合同会議で演説をし、総額4470億ドル(約34兆3600億円)の雇用対策を提案した。この規模は予想されていた金額よりもはるかに大きい。

 リーマンショック後の2009年に就任直後のオバマ大統領が打ち出した経済活性化策の総額が2年間で約7800億ドル(約60兆円)だった。それだけ米経済の悪化に危機感を抱いているということだろう。もちろん来年は大統領選。しかし、現在の支持率が40%台と低いことも気になっているに違いない。

欧州の状況は厳しい

 演説の中でオバマ大統領は「停滞している経済に刺激を与え、企業には投資して雇用を増やせば、それが需要を生み出す」と述べている。このため労働者の減税や企業が給与を上げたり雇用を増やした場合の企業減税を継続するとしている。この減税分だけで2400億ドル(18兆6000億円)と総額の半分以上を占めるが、これは減税を要求している共和党に配慮したものだ。また約800億ドル(6兆2000億円)にのぼる公共投資(学校、橋、道路など)に加え、レイオフされた教師や消防士などを再雇用するために州に対して援助を行うことも予定している。

 下院で多数派を占める共和党は、財政支出を増やすことにはもちろん慎重だが、ベイナー下院議長(共和党)は「大統領の提案は考慮に値する。我々は大統領が我々の提案も同様に考慮してくれることを期待する。現在、米国の家庭や中小企業が直面している見通しのきかない状況に終止符を打ち、長期的な経済成長と民間部門での雇用を増やすための環境をつくりだす。それが私の希望だ」と語った。

 これからホワイトハウスと議会の間で、この経済対策について厳しい交渉が行われるが、世界経済の状況は差し迫っている。とりわけギリシャの債務危機が再燃している欧州の状況は厳しい。2年国債の利回りはトムソン・ロイターのデータによれば、ギリシャが53.8%とハイパーインフレ国のような数字になっている。ただそれだけではく、ポルトガル、アイルランドといった国も9%から12%前後と「リスクの高い国」としてみられている。

 ちなみに日本は0.1%と0.2%の間、スイス(通貨フランの上限を決めて無制限に為替介入することにした)の2年国債の利回りはほぼゼロだ。スイスフランと並んで日本が円高になっていることの表れだ。ちなみに最もリスクが少ないとみられている順番で言うと、1位がスイス、次が日本、シンガポール、米国、香港、ドイツ、サウジアラビア、英国、オランダ、フィンランドである。

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