はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年5月21日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
消費税増税が取りざたされるようになりました。日本は国の歳出の半分しか国税でまかなえていないので、どこかの段階で大幅な増税が必要になることは間違いありません。
まずは、日本の各種税金の税収内訳(外部リンク)を見てください。
これを見て分かるのは、「細かい税金をいじっても根本的な解決にはならない」ということです。増税というと健康に良くないたばこ税や、お金持ちから徴収すべきという意味で相続税などが真っ先に槍玉に挙がります。
けれどそれら周辺的な税では、税率を倍にしても全体への増収効果は限定的です。「相続税やたばこ税を上げろ」という意見は、財政改善策ではなく「特定の思想の実現策」に過ぎません。
財政再建のために必要なのは、そんなインパクトの小さい増税ではなく、基幹税である「法人税」「所得税」「消費税」のいずれかをドドンと倍にするくらいに増収できる方策です。そしてその中で「税率を倍に上げることで税収を倍にする」ことが可能なのは、消費税しかありません。
例えば、法人税を倍にしたら外資系はもちろん、さすがに日本企業も本社の移転を真剣に考えるでしょう。法人税は企業から、所得税は労働者から、そして消費税は消費者から徴収する税金ですが、このうち最も「逃げるのがたやすい」のは企業です。
もちろん「海外に逃げられない」中小・零細企業もたくさん存在しますが、そういった企業はそもそも「すごくもうかっている」ところも多くないので、税率を上げても税収は増えません。
所得税を倍にした場合も、外資系企業の社員は所属籍が香港やシンガポールに変更され、日本には出張ベースでやってきて仕事をするという形になるでしょう。すでに海外に支社がある、グローバルな日本企業もそれに続くかもしれません。
では、「海外に籍を移せない中小企業以下の会社員の所得税を倍にできるのか?」といえば、それでは文字通り生活が破たんする人が急増しますよね。
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