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» 2011年09月09日 13時00分 UPDATE

「基本無料」でビジネスをする方法――ソーシャルゲームのマネタイズ戦略 (5/6)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

マネタイズで重要なことは

鶴谷 深田さんはその後、マネタイズ研究家のようになりましたが、3人全員に聞きたいのですが、マネタイズを意識した時に重要なことを3つずつくらい教えてもらえますか。

椎葉 さっき申し上げたように何千回、何万回、小さな追加をするだけで回るものが正しいと思っています。そうでないものが何かというとアバターなんですけどね。アバターを売るには毎回作らないといけなくて、置いておけば何千回回るわけではない。まあ、アバターを入れて何千回回る仕組みにするというのも1つのアプローチなのでいいのですが。

 もう1つはマネタイズという言葉と離れてしまう発想かもしれないですが、僕は「友達付き合いにお金を払ってもらっている」といつも言っています。「彼女に飽きることはあるとしても、友達に飽きることはないじゃん」という例え話はよくしています。喧嘩して離れた友達はいても、飽きて離れた友達はいないと思うんですね。

 なので、ここはちょっとソーシャルゲームと違うポイントなのですが、ソーシャルゲームはソーシャル上に友達付き合いがあったところに乗っかったゲームなのですが、僕らは発想が逆で、ゲームの中で全然知らないやつら同士が知り合って、すごく強固な友達付き合いを作るということを考えていて、そのためにどういう達成感やどういう過程をたどらせてユーザー同士を仲良くするかというところを考えています。ユーザー同士の友達付き合いに落としてしまえば、さっき言ったように年単位持つんです。

 また、テクニック的には「値付けは高く」といつも思っています。下げることはできるから、とりあえず高くしておく。上げることはできないというのもあるのですが、この手のアイテム販売型のビジネスで一番素晴らしいと思っているのは価格競争がないんですよ。ここの武器は5000円で、こっちの武器は500円だから、じゃあ500円の方を買おうという選択は許されていないですね。はまっているゲームの中におけるアイテムは唯一無二なので、要はオリジナルのアイテムになるんですね。

 世の中ほとんどの商材は類似品があって、ミネラルウオーターもそうですが、ボルヴィックにするかクリスタルガイザーにするかという選択肢があるんですね。同じようなものだったら、安いほうを買ってしまうということがあるのですが、オンラインゲームには基本的にないんですね。その中でしか買えないので、だから基本はやや高めに設定して、下げていく方が正しいと思っているので、いつもそのポリシーは守っています。

 例えば、『ブラウザ三国志』のガチャが600円と300円というのは、もしかしたらこの業界のデファクトスタンダードを作ってしまったと思うこともあります。『ブラウザ三国志』を見て、ガチャの設定をしたという人もいるみたいなので。600円は相当高いですよね。600円と最初設定した時には「こんなん買わねえよ」とみんなが言っていて、僕もそう思いました。

ah_muryo10.jpg 『ブラウザ三国志』のガチャ。1CP=1円である

 (基本無料ゲームでアイテムに使うお金が)ゼロ円の人と1円以上の人との間にはすごい断絶があるんですね。ゼロ円の人は一生ゼロ円の可能性が高いのですが、1円でも払ってくれるとそれ以上払ってくれる可能性が急に上がってくれるんです。これは多分、ディー・エヌ・エーやGREEが統計を取っていると思いますが、それなのでゼロ円のユーザーをむげにしてはいけないんです。

 そしてゼロ円のユーザーでも遊べるようにしようとすると、ガチャの値段を高くするしかないんです。高くすると回る回数が減るので、差が小さくなるんです。ただ、高くして回る回数を減らした分、(ガチャで出たアイテムが)ユーザーに効果があるような見せ方やゲームデザインをしないといけないという課題はあります。「ゼロ円のユーザーはいらない」ではなくて、良き仲間で将来の顧客でもあるので、無理な負担を強いる課金デザインは最悪だと思っているのでガチャが高いんです。

鶴谷 そこは多分、やられている方は悩んでいますよね。無課金ユーザーが「自分はカモだ」と思わないようにしないといけないし、課金ユーザーが課金によって得た実感や報酬を満足につなげられるようにしなくてはいけないですから。

深田 私はゲームの面白みをどこかに使えるのかという視点で眺めているので、モチベーションのありようとか、お金を使う瞬間っていったいどんな気持ちになっているんだろう、ということをいろいろ勉強するんです。すると、やっぱり心理学の知見がすごく参考になることが多いです。これは最近、自分のブログでも書いたのですが、「欲求って何だ」みたいなところって、すごく大事だと思うんですね。

 人間の欲求はいろいろあるのですが、心理学的に答えがあるらしくて、勉強していくと16個の基本的な欲求に分けられると分かりました。それを見ていくと、「完全にソーシャルゲームのマネタイズのポイントだな」ということが書いてあるようなもんなんですね。

 例えば「貯蔵欲求」、貯めることは人間の基本的な欲求なんですと書いてあるのを見た時に、「ああ、それでみんなコンプ(コレクションなどを制覇すること)したがるんだな」みたいな、何か分かったような分からないような気持ちになりました。それ以外にも、人に認められたいという「承認欲求」や、誰かを支配したいとか、強くありたいという欲求が合計16個あって、ゲームのハマるポイントやお金を使うポイントはそういう欲求に沿っているのだと見えてきました。そこで、ゲームデザインとしてどの欲求を押さえにいくのかというところが見えていると、設計しやすくなるなというのが1つの気付きでした。

 もう1つは欲求だけではダメな部分もあって、それを高ぶらせる“感情の揺さぶり”みたいなところが大事です。競争させたり、協力させたり……。さっきのコミュニティという話もありましたが、チームのメンバーに迷惑をかけたくなかったりした時に、感情の高ぶりがグンと上がって「しょうがないから買うか」となります。あるいは、ここまでにこれをやらないとこのアイテムをもらえませんとか大会で優勝できませんとか、そういう時間を区切られると人間の感情はすごく揺さぶりが大きくなる。基本的な欲求をベースにしながらも、感情の揺さぶりを作るような仕掛けというものを多く作ることで、ユーザーはお金をどうやら使っているらしい、だいたいみんなそんなやり方をしているということが分かってきました。

本城 明日オンラインゲーム講座のようなセッションをやるのですが、その中で良いオンラインゲームの条件って何だろうとちょうど同じことを考えていました。非常にシンプルなのですが3つあって、1つ目がゲームとして面白いこと、2つ目がそのゲームの一番面白い部分に課金が入っていること、3つ目がまた明日も遊びたくなること。この3つが全部そろっていれば、いいゲームになるんじゃないかと思っています。

 ゲームとして面白いかどうかということは、やってみてつまらなかったらユーザーはやめてしまいますので、継続率が上がらないとまったくお金にならないので、基本的に絶対面白くないといけないんですね。

 ゲームの一番面白い部分に課金が入っていることというのは結構抜けがちで、ゲームとして面白いんですけど、なぜかアバターを売ったりしていることとかが結構あります。ユーザーが一番面白いと思って心を動かされている瞬間に、「さあお金を払ったらいいことができますよ」というのが入っていることがとても大事だなと。

 また明日も遊びたくなることというのは、椎葉さんもおっしゃっていた何年もできるゲームを作ろうというのに少し通じるのですが、お客さんは無料でゲームをしているので、また明日も来ようと思わなかったら、一生帰ってこないんですね。なので、その日ゲームが終わる瞬間に心残りがあるように、友達とメールのやり取りをしたとか、何か書きこんだとか、あともう少しでコンプできるのにとか、ミッションクリアできるのにとか、ちょっとした心残りを貯めていって、「また明日もう1回やろう」と思ってもらうこと。毎日どこかしらに心残りを作って、継続率を上げるということです。この3つがポイントかなと思っています。

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