民放キー局で放映されるテレビ番組は、報道系を別にすれば、バラエティやドラマなどは基本的には多くの番組制作会社の制作協力によって成り立っている。
しかし、バブル崩壊以降、実に20年に及ぶ不況の中で、その制度疲労は今や限界に近付いてきているようだ。
「長期不況で、番組制作費は年々じりじりと下がりつつあり、リーマンショック後に限定しても、実に10〜20%減少しています。しかし、その一方でコストは上昇傾向にあるのが現実で、我々のような番組制作会社の経営を圧迫しています」
番組制作費は、今や民放キー局のゴールデンタイム(19〜22時)でも1分単価にすると50万円を切る番組もあり、深夜帯になると30分200万円程度が当たり前というのが現状だという。CS放送に至っては、30分30万円というケースもあり、この場合は1人で取材に行って、1人で編集・MA(音入れ作業)までやるのだそうだ。
また、民放キー局に対する制作協力の中身も変質してきており、最近では「番組スタッフの派遣」の占める比率が高まり、「番組制作業務」を受注できる比率は減少傾向にあるというのが実情だ。
番組制作の環境を悪くしているのは、こうした経済的要因だけではない。それは番組視聴率だ。日本の民放テレビが、企業などのスポンサーシップによって成り立っている以上、その番組が1人でも多くの人に視聴されるようにすべきことは言うまでもない。
しかし、そのことが番組制作の自由度を著しく低下させ、結果的に「最近のテレビは面白くない」と言われる状況を招く一因になっているのではないか。その辺の事情について、霜田さんは次のように説明してくれた。
「テレビ番組は、私が関わるドラマに限らず視聴率をとることが目的で制作されます。テレビ番組がほかの映像コンテンツと異なる点はまさにここにあります。テレビ以外の映像コンテンツは、コンテンツそれ自体を購入してもらうことで成り立っていますが、テレビ番組は不特定多数のお客をたくさん集めて、そこで広告を見てもらうことで成り立ちます。
そのため、単一の個人の価値観に賭け、作家性を追求するというアートとしての側面は失われ、ボリュームゾーンを狙った個性の薄い作品になってしまう傾向があるのは事実です」
霜田さんによれば、今や深夜帯のドラマでもF3層※をとらえないと視聴率は取りづらく、とがった番組は作りにくいのだという。
そして、こうしたとがった番組を作れないことが、若い世代のテレビ離れを一層加速させているのだと霜田さんは嘆息する。
「現代はWebの発展によって、どんなテーマでも深く掘り下げていくことができますし、それが若い世代の当然のニーズでもあるわけですが、日本のテレビはそうした環境変化に適合できないのが現実です」
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