東電のホームページを見てみよう。トップには社長名で、被災地へのお見舞いと全力で収束する決意が書かれている。被災した福島第1、第2原発の状況を伝えるバナーと問い合わせ先、でんき予報と節電の知恵と続く。
「電力の使用状況グラフ」は当日の電気使用状況を伝える。「節電の方法について」をクリックすると節電アイデアやその効果検証、電気製品の使い方、法人事業者向けに業種別節電まで紹介がある。
ところが「過去の電力使用実績データ」を調べると、CSVデータしか表示されない。1月1日から現在まで「1時間ごとの正確な消費電力数値」の羅列。ある時点の昨年対比を見たい場合、両年データをそれぞれExcelにコピーして、割り算して比較するしかない。それを……消費者にさせるの?
福島の事故対策は不断に継続されている。災害補償で多くの社員が駆り出されている。本社もリストラを進める。世論の攻撃にさらされて、貝のようになりたい気持ちも分かる。でも、もう1つ足りない。
同じ国策会社でも、2010年1月に倒産したJAL(日本航空)の再建姿勢にはそれがある。
JALでは機長やキャビンアテンダント、整備士たちがさまざまなイベントで消費者に接する。まず「折り紙ヒコーキ教室」では、子どもたちに現役機長が折り紙ヒコーキの作り方を教えてくれる。
8月下旬の広島県神石高原でのイベントでは、現役パイロットによる航空教室(飛行機の飛ぶ仕組みの話)やJAL制服試着(残念、おこさまのみ)を開催。JALでは社員220人が「日本折り紙ヒコーキ協会」の認定指導員資格を持っている。
また「そらいく」イベントは、温暖化の進む氷河や二酸化炭素を出すシベリアの森林火災の様子などを、現役パイロットが上空1万メートルのコクピットからの写真で説明する。現役キャビンアテンダントの機内アナウンス実演もある。ヒコーキもそらいくも、各地で出前開催中。
徳島空港では駐機場でラジオ体操イベントを開催。普段立ち入れない広々としたエリアで体操をするのはいい。釧路では有効期限が切れた航空路図を使って、手作りのブックカバーを配布した。これは欲しかった。
これらの中には倒産前から実施してきたものもある。だが、倒産後にJALに搭乗した時、機内には明らかに温かさと感謝が満ちていた。「再建しよう、好感を持ってもらおう」が伝わってきた。だからこそ2012年度第1四半期は急回復の黒字。経営者が稲盛和夫氏に代わり、社員が変わったのだろう。ひとりひとりが、ひとりひとりにありがとう。JALにはそれがある。
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