日本社会の中間層の厚みを増していきたい――野田首相就任会見全文(3/5 ページ)

» 2011年09月03日 06時42分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

「財源なくして、政策なし」

――(時事通信・水島)野党との関係について、お伺いいたします。総理が呼びかけました震災復興や税制改正に関する実務者協議ですが、自民党の反応を見ますとどうも慎重なようであります。具体化に向けた筋道を、総理はどのように描いてらっしゃるのでしょうか。また大連立を視野に入れているという立場には変化がないのでしょうか。それから自民党は3次補正が成立した後に衆院の解散を求めておりますが、総理は過去の著作で正統性のない政権が国政のかじ取りを担うことは好ましくないという趣旨の記述もされておられますけれども、現時点での衆院解散に関するご見解を教えてください。よろしくお願いします。

野田 昨日、自民党谷垣総裁、そして石原幹事長、公明党の山口代表、井上幹事長とお話をする機会を頂戴いたしました。私の問題意識は、今、率直にこの日本の抱えてる課題、その問題意識を共有していただくとともに、そしてそれについて正に国難でありますので、一緒に信頼関係を築きながら政策実現をし、そして一緒に成果を挙げていきたいという思いから、自分なりの思いをお伝えをさせていただいた次第です。

 具体的には、当面は今ご指摘のあった通り、復旧・復興です。復旧・復興策、それぞれの党によってそれぞれの提案があります。そういうものを踏まえて第3次補正予算に結実をしていきたいと考えています。そのためにもこれは同じ土俵に乗って十分議論できる、被災者のために、国民のために、お互い政党、政派の立場を乗り越えて、早急に課題解決の、その成果を出すことができるのではないかという思いで、ご提起をいたしました。

 加えて第3次補正を作る際には、税制改正、租税特別措置の問題はクリアをしました。寄付金税制などの一部の政策税制についてはクリアして、ただ税制改正の本体が残っていますね。法人税減税等々、その議論を第3次補正とあわせて行うことになっているので、それはこれまでも実務者の協議をやってきていますので、その税制に対するプロジェクトも作りましょうよと、加えてその先には復興財源どうするかという議論も出てきますので、そういう議論をしましょうよというご提案をしました。

 それから、依然としてさっき私も触れた円高の問題等がございますので、経済対策についてどうするかと、少なくとも当面の課題について意見交換をして、知恵を出していきましょうというご提案をさせていただいたわけであります。

 私は問題意識についても十分共有していただいたのではないかと思います。後は、幹事長、政調会長のレベルでどういう形の仕掛けの中で議論をしていくかというところ、色々党内のご意見とか手続き論もあるようでございますが、そこの一線を早く乗り越えていただいて、早く議論をさせていただければな、という強い願望を持っている次第であります。

 解散総選挙の時期のお話がございました。私はさっき申し上げたようなさまざまな大きな問題が残っている状況の中で、少なくとも復興の問題は今年中にケリがつく話ではありません。今年は第3次補正予算どうするかという議論もありますけれども、引き続き復興に向けての取り組みは必要でありますし、経済についてもこれはこれからも引き続きさまざまな努力が必要であろうと思いますので、政治空白を作れる状況ではないというのが私の基本的な認識でございます。

――(日本経済新聞・犬童)先ほどの関連なんですけれども、税制改正について言及されましたが、「経済政策を間断なく実行していく」と昨日、経団連の米倉(弘昌会長)さんに、総理おっしゃいましたけれども、何をやるにもやはり財源が避けて通れないということで2つ質問したいんですが、復興増税ですね、まず。これは代表選の時も賛否が分かれまして、焦点になっているんですけど、来年度実施するということについて総理は一時言及されておりましたが、来年実施、あるいは来年度実施どちらか分かりませんが、総理はその意向に変わりはないのかということが1つ。もう1つは、税と社会保障の一体改革なんですが、これに関連して2010年代半ばまでに消費税率を10%までに引き上げる、という関連法案ですね、税法の付則に書いてある通り、来年の3月までに法案を国会に提出するという、その考え方に変わりはないのか。そしてその法案は来年の通常国会に出すという決意に変わりはないのか、その2点についてお願いします。

野田 「財源なくして、政策なし」というのは基本的な立場です。復興は大事です。そのためのお金をどういう形で捻出をするかということは、あわせてしっかり議論しなければなりません。

 その際の大事な前提というのは私は2つあると思っておりまして、1つは復興の基本方針です。これは閣議決定をこれまでしてまいりました。将来世代に負担を残すのではなくて、今を生きる世代が連帯して負担を分かち合うというこの理念のもとで、財源の話をしていくというのが基本です。

 それからもう1つは復興基本法です。仮に復興債を発行する場合には、その償還の道筋を明らかにするということが、これ法律に書かれています。これは与野党が合意をしたことです。この2つの基本方針と法律に基づいて対応するということが、筋だろうと思っております。

 ということは徹底した歳出削減の取り組み、税外収入の確保、国有財産の売却、あらゆることをやります。その上で足りない部分についてはどうするかは、これは時限的な税制措置を取るというのが、今の2つの基本方針と法律から導き出せる結論だと思います。

 ただし経済情勢はよく勘案しなければなりません。何が何でも原理主義でということではないですね。だから、時限的な税制措置を取る場合にも、いつから始めるのか、償還の期間はどれぐらいにするのか、仮に税制措置を取る場合には基幹税を始めとして検討するということになっていますが、その組み合わせはどうするのか、さまざまな選択肢が出てくると思います。

 今回新しい体制を早急に作らせていただいて、政府税調の、特に作業部会の議論を早くスタートさせてその複数の選択肢を早く示していただいて、執行部に提出をしていただくと。それを踏まえて与野党の協議をしていくという段取りをとっていきたいと思います。

 それから税と社会保障については、いろいろ侃々諤々の議論がございましたけれども、成案をまとめました。その成案の中に付則104条(参照リンク)に基づいて、税制の抜本改革については2011年度中に法律を提出をするということになっています。2011年度中ということは来年の3月までに、その準備はきちっとやっていきたいと思います。

 この法律の整備をすることが、即なんとなく増税というイメージを持たれる方がいらっしゃいますけれども、これは成案に書いてある通り、2010年代半ばまでに段階的に実施をするわけです。いつから実施をするということは、この成案の中に書いてある行革の取り組みであるとか、経済状況が好転するかどうかとか、そういうことを勘案をするわけですので、法律を作ったから即実施だと勘違いをしている方がいらっしゃいますが、そういう今申し上げた成案に書いてあることを法文に書くことが大事であるということで、これは誤解が無いようにお願いしたいと思います。

――復興増税については来年度から実施になるのですか。

野田 来年度にするかどうか。始期、スタート、それから償還期間、これは多様な選択肢の中から出てくるものを選び取っていきたいと思います。

――(読売新聞・穴井)総理は「怨念の政治を乗り越える」とおっしゃいましたけれども、今回の人事によって、これまで小沢元代表を中心とした反小沢、脱小沢、親小沢という対立は乗り越えられるとお考えでしょうか。また今後、小沢元代表の党員資格停止処分の解除を求める声がありますけれども、どのように挙党態勢を作っていくお考えでしょうか。

野田 代表選挙の時に「怨念の政治はもうやめましょう」と「脱何とかとか、反何とかとか親何とかとか、そういうのはやめよう」と。自分たちの行動の正統性を主張するために、反とか親とか付けるようなことは好ましくないという思いで申し上げました。

 そして代表選挙の結果が出た後には「もうノーサイドにしましょう」とお訴えをしました。言葉だけではなくて、具体的にどういう形で人事で表れるかについては、自分なりに心を砕いて党の、党内人事の骨格を決めさせていただき、今日発表させていただいた、組閣をしたつもりでございます。

 どういう形で評価をしていただくかどうかは分かりませんが、私なりにはそういう意味での、基本を抑えながらその上で適材適所の人選をさせていただいたつもりであります。これからもそういう姿勢を具体的にやっていきたいと思います。で、後段が何か……。

――党員資格停止処分。

野田 これは過去の執行部が何カ月もかけて丁寧にまとめた結論というものをしっかり踏まえるということが原則だと思います。その上で、改めてそうした経緯というものを新しい体制の中でよくお聞きをしていくという作業も必要だろうと思いますけれども、これは特に何か急変をするとかいうことではなくて、あわてずにしっかりと旧執行部のお話などを今は聞いていくという作業だろうと思っています。

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