日本社会の中間層の厚みを増していきたい――野田首相就任会見全文(1/5 ページ)

» 2011年09月03日 06時42分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 野田佳彦首相は9月2日夕、内閣が正式に発足したことを受けて、首相官邸で就任後初の会見を開催した。内閣の最大の使命を東日本大震災からの復旧・復興と定め、長期的に脱原発の方向性を目指すことを表明。一方、経済においては円高・デフレからの脱却を目指し、外交政策では日米同盟重視の方針を打ち出した。

 その会見の模様を、首相官邸公式Webサイトの動画(参照リンク)をもとに詳しくお伝えする。

野田佳彦首相(出典:首相官邸公式Webサイト)

震災からの復旧・復興が最大の使命

野田 本日、天皇陛下の親任をいただきまして、正式に内閣総理大臣に就任をさせていただきました。国民のみなさまに、私の野田内閣が取り組むべき課題と、そして私の政治姿勢についてお話をさせていただきたいと思います。

 まずは、本論に入る前に、3月11日に発災をいたしました東日本大震災において、尊い命を失われた犠牲者のみなさまに心からご冥福をお祈りしたいと思います。また、いまだなお不便な避難生活を余儀なくされている被災者のみなさまに心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 ただ今、お悔やみとお見舞い申し上げました、この震災からの復旧・復興、私どもの内閣については、菅内閣に引き続き、最優先の課題であると思っております。この震災の復旧・復興、これまでも政権として全力で取り組んでまいりました。しかし、仮設住宅の建設であるとか、がれきの撤去、あるいは被災者の生活支援、一生懸命取り組んでおりますけれども、まだ不十分というご指摘もいただいております。こうした声をしっかり踏まえながら、復旧・復興の作業を加速化させていくことが、私どもの最大の使命であると思います。

 加えて、何よりも最優先で取り組まなければいけない課題は、原発事故の1日も早い収束でございます。福島原発の炉の安定を確実に実現をしていくということと、原発周辺地域における放射性物質の除染が大きな課題でございます。

 第1次補正予算、第2次補正予算、それぞれ除染については対応をしてまいりました。しかし、より緊急に、より大規模にその除染を推進をするために、まず予備費の活用をさせていただき、そして引き続き東日本の大規模な除染を国が先頭に立って、省庁の壁を乗り越えて実施をしていく必要があると考えております。また、特にチルドレンファーストという観点から、妊婦そして子どもの安心を確保するために全力を尽くしていきたいと考えています。

 代表選挙の時にも申し上げさせていただきましたけれども、福島の再生なくして日本の再生はございません。この再生を通じて日本を元気にするとともに、国際社会における改めて信頼を図るという意味からも、全力で取り組んでいきたいと考えております。

 もう1つ、大事なことは、世界経済におけるさまざまな危機における対応でございます。私は、産業空洞化の回避、エネルギー制約の中での経済の立て直し、加えて震災の前からの危機、財政の危機にしっかりと対応することによって、国家自体の信用危機に陥るということのないように、すべての危機に対応策を講じていきたいと思います。

 まずは、歴史的な円高で、空前の産業空洞化の危機を感じざるを得ません。財務大臣のころから「必要な時には、さらなる為替介入も辞さず」との姿勢で各国と連携をしてまいりました。これからも、各国ときっちりと連携をしながら対応させていただきたいと思いますが、国内的に円高対策は、待ったなしの状況だと思います。立地補助金の拡充、昨年来、経済対策の一貫として約1400億円規模の立地補助金を講ずるということをやってまいりましたけれども、さらなる拡充が必要であるという風に認識をしています。

 そして、この円高・デフレの中で呻吟(しんぎん)をしている、特に資金繰りでお困りになっているたくさんの中小企業があると思います。中小企業の資金繰り対策などの経済対策を果敢に実行をしていきたいと思います。

 あわせて、円高、もちろん今の震災から立ち直ろうとしている日本経済に、経済の実態からもあるいは金融面からも悪影響が出つつありますけれども、一方で円高によるメリットというものもあります。先般、海外の資産やあるいは企業を買収するようなことができるような1000億ドルの対策も講じましたけれども、こうした円高メリットも活用するような対策も引き続き講じていきたいと考えております。

 次に、エネルギーの制約克服についてでございます。電力は経済の血液であります。国民生活の基盤であります。今年の夏の計画停電を回避できたのは、産業界のみなさん、そして国民のみなさまの節電のおかげでございました。短期での需給不安を払拭しながらも、中長期的な電力エネルギー計画を見直しをするということに取り組んでいきたいと思います。

 当面は、ストレスチェック等々踏まえて安全性をきっちりと確保しながら、地元のみなさまのご理解を前提に定期検査の原発を再稼働、規定方針に従い、安全規制は、保安院を経産省から分離、こうした体制作りをしっかりと行っていきたいと考えております。

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