スティーブ・ジョブスからの手紙への“返信”を考えてみた郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年09月01日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 8月24日付のスティーブ・ジョブスからの手紙をどう受けとめましたか?

Apple取締役会およびAppleコミュニティーの皆様

私はこれまで常々、私がAppleのCEOとして職務と期待に応えられなくなるような日が来たときは、私からまず皆様にお伝えすると申してきました。残念ながら、その日が来ました。

私はAppleのCEOを辞任いたします。もし取締役会が認めてくださるならば、取締役会会長、取締役そしてAppleの従業員として今後も務めさせていただきたいと思います。

私の後任には、継承計画を実行し、ティム・クックをAppleのCEOに任命するよう、強く薦めたいと考えています。

Appleの最も輝く、最も革新的な日々はこれからだと信じています。その成功を新しい役で見守り、また貢献したいと思っております。

私はAppleで、生涯で最高の友人と言える人たちと出会いました。長年にわたり、皆様と一緒に仕事をさせていただいことに感謝いたします。

スティーブ

 これを読んで、私はまだ立派に動く初代iPodを引っ張り出し、iPadをパチンとはじき、iPhone 4をキュッと鳴らし、MacBookをコンコンとして「ありがとう」と言った。

 私はAppleの関係者でもないし、IT業界人でもない。Apple製品の1ユーザーに過ぎない。お客なんだから感謝はされても、海の向こうのガイジン経営者に感謝するなんてどうかしている。

 でも、やはり感謝したい。そんな経営者は地球上でジョブスくらいだ。今回のコラムはジョブスの手紙への返信である。

私の持つApple製品

製品にありがとう

 Dear Mr. Steve Jobs

 1997年の暫定CEO就任以来14年に渡り、革新を生み出し、業界を越える新ルールを創り、何億人ものライフスタイルを変えた功績に驚きます。その核心にあるのは優れた製品。

 Appleを追われた後の1985年のインタビューで「作りうる最高のものを作りたいだけ」と語りましたね。消費者リサーチをせず、自分たちが最高であると思うものを手を抜かずに作る。誠意ある大工がたんすを作るように、裏側にさえ合板を使わない美学を貫く。

 その25年後の2010年のインタビューでもこう言いました。「5年前、10年前でも、我々の信じていることは変わらない。一番大切なことはベストな製品を作ること」。

 最高の製品を作る。当たり前のようでどの会社にも当たり前ではないのです。コストや生産性、加工性、物流や販売期間など、さまざまな言いわけをつけて妥協するのが製品開発です。その結果、自社製品を買わない企業のトップもいるとか。それでは誰のための製品なのでしょうか?

 あなたが生み出してきたのは「製品」ではなく「作品」でした。

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