次の政権は、短命でいい。なぜなら藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年08月29日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

菅内閣の震災対応はお粗末

 この内閣の使命は、大震災からの復旧・復興である。あまりの被害にたじろいだのかどうか、菅内閣の震災対応はお粗末だったと思う。スピード感がまったくない。復興基本法が成立したのは震災後3カ月たった6月中旬。しかもガレキ処理などについて国が費用を負担することが法律として決まったのは8月になってからだ。いまだに放射性物質を含んだ土などの処理が決まらず、表土をはがして土を入れ替えた施設では穴を掘って埋めたりしている。

 復旧・復興を急がないと、企業が日本国内で行う設備投資が遅れ、海外で立地しようとする企業が増える可能性がそれだけ高まる。海外のメーカーが日本に発注していた部品が海外の部品会社に流れ、日本の工場が復旧しても注文が戻ってこないかもしれない。しかも地震や津波の被害だけでなく、今回の震災では原発事故による被害も発生している。多くの人々ができるだけ早く自分の生活を取り戻せるようにすることが重要なのに、政府の対応を見ているととてもそこまで手が回っていないように見える。

 震災後の対応という意味では、もともと自民党、公明党の協力をどう取り付けるかということが重要だったはずだ。それをやり損ねた、あるいはそういう問題意識が希薄だった菅総理は、実際にはその時点(自民党の谷垣総裁にいきなり電話をして、にべもなく断られた時点)で辞任すべきだったのである(関連記事)。震災からの復興という最優先すべき政治目標が目の前にあるときに、それを実行できなければ「政治家失格」である。

 その意味では、自民党、公明党と協力して(他の政党はどうでもいいというわけではない)復旧・復興のための内閣を組み、来年の3月、遅くとも9月には総選挙を行うという「時限内閣」にするのがよさそうだ。もちろんその間は、政党間の対立がある難しい問題はできるだけ棚上げして、どうしても必要なことだけをする。来年度予算は、メリハリのない「先送り予算」にし、自民党や公明党がのみやすいものにする。外交的には、それこそ「顔の見えない」政権になるだろうが、それでも復旧や復興が遅れるよりはましだというぐらい腹をくくってもよかろう。

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