メンテビジネスはおいしいちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年08月29日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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“1円入札”が生まれるワケ

 このように「最初のハードは格安で売り、メンテや補充品はすごく高い。そっちでもうける」という商品はよくあります。最初にこういうもうけ方を思い付いた人は本当にエライですね。

 以前よく問題になった、役所などのシステム構築費の“1円入札”もその1つです。とりあえず最初のシステムだけ落札できれば、翌年からの拡張費やアップグレード費用はすべて自社が独占できるので、入札価格1円などというめちゃくちゃなことが起こるのです。

 そのほかに有名なのは、エレベーターです。マンションにお住まいのみなさん、エレベーターってやたらと点検していませんか? マンションもオフィスビルも、エレベーターは一度設置したらあとは何十年も取り替えません。なのでビルを建てる最初に自社エレベーターを選んでもらえれば、向こう40〜50年も「メンテの仕事は独占」できます。

 詰め替え用インクと違って命にかかわる商品なので、関係のない会社が「見よう見まねでメンテする」のは難しいし、ビル管理側もできれば作った会社の系列会社にメンテしてほしいですよね。というわけで、一度“箱”が売れたら、向こう40年分のメンテ料金が「他社との競合なしに受注できる」なら、最初の“箱”は「少々安くしてもとにかく売れ!」ということになります。

国家資格もメンテビジネス

 もう1つ、事実上「メンテでもうける」形になっているのが、「国家資格ビジネス」です。民間が主導して始まった資格でも、国家資格に認定されると応募者がケタ違いに増えるため、資格の多くが「国家資格化」を目指します。

 それらの資格をとるには、もちろん受験料もかかりますが、合格後にも資格を維持するために毎年、年会費がかかるものも多いです。30歳で資格をとった人が60歳までその資格を維持してくれたら、資格の主催団体には30年間毎年、年会費収入が入ってくるわけです。

 人気資格ではこれが相当な額になります。しかも、そんなに集めたお金をいったい何に使っているのでしょう? 実際には1年に1度、会員名簿を更新するくらいで、後はほとんどまともに活動していないところも多く、「国家資格のメンテ」は本当においしいビジネスになっています。

 特に合格が難しい資格ほど、「せっかく苦労してとった資格だから、(たとえ自分の今の職業にまったく関係なくても)失効させたくない!」という思いが強くなります。そして多くの人が、決して安くない年会費をせっせと払ってくれるのです。資格の累積保有者数が多い団体の場合、この額は驚くような規模になっています。

 そしてそういう団体には「資格を国家資格に認定してくれた霞ヶ関の担当官庁」の人が天下っています。みんなが払う年会費の使い道の一部が、そういう人の年収や(その人の人生における)何度目かの退職金になるというわけです。

 特に使っていない資格の年会費をずっと払っている人は、よく考えた方がいいと思います。その資格、本当に必要ですか? 国家資格までメンテビジネスでもうける時代です。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

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