評価は後世に委ねたい――菅直人首相、辞意表明会見全文(4/5 ページ)

» 2011年08月27日 15時56分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

浜岡原発運転停止後に圧力はあったのか

――(AP通信・山口)大震災、原発事故、それから歴史的な円高、財政困難などいろいろな国難にもかかわらず、政策論争というよりむしろ政局が優先しているというこの事態に被災者を始め、国民も批判をしているわけなんで、米国大統領は例えば1人で4年間勤め上げるんですけれども、日本ではこの4年で、次におなりになる方は6人目の総理ということになっています。政策が行き詰まったりあるいは支持率が下がったらすぐにその総理が首になるという日本の政治はどうなっているのか。海外の方でも日本の超短命政権について関心があると思いますので、この点について、総理はこの半年、今までの方よりも一番ご苦労なさったのにこの質問をするのはすごく恐縮なのですが、ご見解をお願いしたいと思います。それから次の総理には外交問題を含め、どういう政策を期待なさるか教えてください。

 日本の総理が一般的に大変在任期間が短いという問題。理由はいろいろあろうかと思いますが、私は構造的な理由としてですね、参議院選挙が3年に1回、衆議院選挙もほぼ3年に1回、つまりは3年に2度の国政選挙がある。そしてその選挙の前には「支持率が下がった。総理は代わってくれ」という圧力がかかり、またその選挙で負ければ、たとえ参議院選挙であっても責任をとれという、そういう圧力がかかっていく。つまりそういう国政選挙が衆参で3年間に2度ある中で、その選挙の度に前後にそうした交代が何度も起きてきている、こういうことに構造的な背景があると思います。

 例えば英国のキャメロン首相は、連立政権を作った直後に「5年後の●月●日に次の総選挙はやります」と言ってその後政策的にかなり厳しい政策をとって、支持率が下がっても国民は次の総選挙まではキャメロン首相でいくんだということを、国民もある意味で野党も含めて前提としている、そういういわば慣習が定着していると思います。

 そういう点では私は日本もやはり、せめて衆議院の任期の4年は、政権交代があった時には同じ首相で続けていくことが、ある意味国民的な、あるいは政治社会における慣習となっていくことが望ましい、このように考えております。

――(フリーランス・江川)「脱原発依存社会を作るのだ」という決意をこの場でも以前、首相は述べられましたけれども、その後「個人的な考えだと発言が変わったりですね、外から見てるとかなりいろんな抵抗にあっていたのではないか、と思われるわけです。脱原発依存社会を作っていくために、今の国の仕組みの中でどこが一番問題があると感じられたでしょうか。また、浜岡原発を止めてから非常に、いわゆる菅降ろしが激しくなった、と見る向きもあります。菅さん自身は、それを感じたでしょうか。感じたとすればどこからの圧力を感じたのでしょうか。

 これは先ほどのあいさつの中でも、あるいはみなさん方がよく使われる言葉でもありますが、原子力村という言葉をあげて、そのことは行政の仕組みから、経済界のあり方から、あるいは学者を含めたそういう専門家集団、さらには文化の問題にも関わっているということを申し上げました。

 そういう点で、この原発に依存しない社会を目指すということについては、もちろん私は政治家ですから、まずは行政や仕組みのあり方を改革しようとして、取り組んでいるわけですけれども、それを超えての取り組みが必要だと、このように感じております。

 浜岡原発の運転停止を要請した後に、そういうある意味での圧力が強まったのではないかというご指摘でありますが、これはなかなかですね、1つの感覚ですので、証拠をもって言うことは難しいところはありますけれども、しかし、非常にある意味厳しい指摘や、いろんな厳しい状況がより強まったということは私自身は、ひしひしと感じておりました。

 しかし一方では、それを超える大きな力もわき上がってきているということを感じておりましたので、これからしっかりと、この原発に依存しない社会の実現には、取り組んでいくし、十分その道はひらかれていると、このように感じております。

――(読売新聞・穴井)2009年の政権交代を成し遂げたマニフェストなんですが、菅政権ではこの一部を見直すことに取り組みました。今また代表選でマニフェスト見直しを巡って論争になっておりますけれども、このマニフェストを見直さずに政権を運営するということが可能とお考えになったのかどうか、マニフェストを大胆に見直さなければ誰が総理になっても政権運営できないとお考えなのか、その辺はどうお考えでしょうか。

 現在、マニフェストの見直しを岡田幹事長を中心に進めて、確か今日ですか、マニフェスト中間検証を発表したと承知しております。マニフェストについてはいつも申し上げますように、大変国民との約束という意味で、重要な約束であります。そして、2009年のマニフェストについて、相当程度実現したところもあります。

 しかし、すべてが実現できたか、あるいは当初予定した財源の捻出が可能か、ということになりますと、かなり難しいところ、あるいは見通しの甘かったところも、率直なところありました。そういった意味では私からも、国会の場でそのことを認めて、おわびを申し上げたところです。

 そういった意味で、マニフェストの重要性は変わりません。しかし、それをあるレベルの見直しをしていくということはこの間、党としてもやってきたことですし、それは一定の理解を党内で得て、今回の中間検証になったものと、そのように受け止めております。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.