年俸制で会社を変えるにはどうすればいいか

» 2011年08月26日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 年俸制は単に支払いシステムに過ぎないというのは、その通り。年俸制はおおざっぱに言えば、給与から成果対応でない3つの要素(「残業代や休日出勤手当などの時間対応手当」「定期昇給など自動昇給部分」「家族・住宅・資格など属性対応手当」)をなくしただけのこと。これらをなくしただけで人や組織が良い方に変わるわけがないというのは、専門家に言われなくても分かる当たり前のことです。

 なので、年俸制を機能させるためには「評価制度」が大事だという展開をする人が多いわけですが、これは思考停止です。手当がなくなるということは、評価が反映される部分が大きくなるので、評価が大事ですということまではその通り。

 でも、だからといって年俸制がうまくいかないことを評価の仕組みと評価者のスキルの問題だけに帰結させるのは、安易と言わざるを得ません。つまり、評価の問題を解決すれば年俸制が機能し始めるという結果にはなりません。

本質的な問題は評価結果の硬直化

 本質的な問題は、評価結果が硬直化してしまっていることにあります。いい人はいつもいい、普通の評価、良くない評価を受ける人がいつも大体同じになってしまっていることにあります。評価の仕組みと腕を磨いても、いつもいい人とそうでない人がはっきりしているのであれば、年俸制が生産性や意欲の向上に寄与することはなく、単に人件費をコントロールできるようにしただけの結果に終わります。

 評価の良し悪しが、頻繁にとまではいかなくても入れ替わることがあれば、評価が多少下手でも年俸制が機能し始めるはずです。だから欠けているのは、評価の仕組みやスキルというよりは、達成や成長を支援するシステムであると言えます(その結果として評価結果が入れ替わる)。具体的には、マネジメントや育成・教育を、年俸制を機能させるためのサブシステムとして位置付けて充実・レベルアップさせることが重要であるというわけです。

 「年俸制では会社が変わらない」というのは間違いで、年俸制は評価がすべてだといった支払いシステムに限った視野の狭い議論をしたり、年俸制にするから頑張れよと言っただけで放置したりするから、変わらないのであります。「年俸制が機能しないのは、人が育っていない証拠。

 「人が育たない→評価が硬直化する→年俸制が機能しない」という観点に立ち、人を育てる仕組み・制度を見直すことによって年俸制を機能させる(生産性や意欲の向上に寄与する)ことが重要なのです。(川口雅裕)

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