震災から5カ月。いまだ完全に客足が戻ったとはいえないまでも、少しずつ回復基調に向かいつつあるはとバス。安心・安全・信頼感をベースにしながらも、はとバスが顧客から支持されるファクターの1つとして、企画の斬新さがあると言われる。
昭和の時代に活躍したバスガイド(OG)を起用し、味のある名調子で懐メロを歌ってもらう企画が大ヒットしたり、「女子力アップツアー」と称して御殿場のアウトレットやオシャレなレストラン、パワースポットとして名高い箱根神社などをめぐるツアーが若い女性の人気を集めたり……新しい企画を、どのように商品化しているのだろうか。
「何より大事なものは“ひらめき”です。全社員が企画マンとなって担当部門に提案しています。それを担当スタッフたちが多面的に検討し、最終的には『お得感』『限定感』『ニーズ先取り』というファクターの中でまとめていくことができたものが、商品になっていきます」
はとバスでは、都内定期観光だけでも200本近い企画がある。このうち約100本が新規企画、残りの約100本が従来からの企画をマイナーチェンジしたものとなっている。新しい企画が多いのは、首都圏在住の顧客の比率が高くなっているからだ。そういった顧客ニーズに応えるには、定番コースのほか、流行をいち早く取り入れ、タイムリーに企画に反映したものが必要になってくる。例えば今年人気なのは、やはり「東京スカイツリー」関連ツアー。また震災後、人々の意識が人生とか内面に向かうようになったということで、『阿字観(あじかん)体験』という瞑想体験ツアーも新しく企画した。
はとバスでは、各地へのバスツアーを「企画旅行」と呼んでいる。企画旅行の”打率”(集客に成功し、ツアーバスが出る比率)は約5割。業界平均は約3割と言われるから、打率は良い方だ。
「企画旅行に関しては年間600本ほどあり、そのうち約180本が新規企画です。現在の人気コースは富士山や仁右衛門島(南房総・手漕ぎ渡し舟&鯨料理)などですね。今年は特に震災以降はどちらかと言えば山の人気が高いですね。涼を求める気持ちからでしょうか。
逆に厳しかったものもあります。数年前、(樹木の発散するフィトンチッドという物質による癒やし効果が注目され)“森林浴”がブームになりましたよね。それで『森林浴ツアー』を商品化したのですが、厳しい結果となりました。また、“脳トレ”が一時、すごいブームになった時、『脳トレツアー』を企画したのですが、これも不首尾に終わりました」
世の中の流行を半歩先取りしたとしても、それが「バスツアー」という形態に馴染むかどうかは、また別の問題なのかもしれない。企画の苦労が忍ばれるエピソードだ。
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