川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
「窓際族」とは重要な役割や使命を与えられなくなり、暇を持て余して(窓際で外を眺めて時間を過ごして)いる役職者やベテラン社員のことを指している。
最近、あまりこの言葉を聞かなくなったのは、ひょっとして「窓際族」が増えた結果、多くの会社において大して珍しいことではなくなってしまったからではないだろうか。中高年層の扱いに困っている会社は昔に比べればはるかに多いようであるし、実際に潜在的失業者を加味すれば失業率は10%を優に超えるといった調査結果も存在する。
かなり前の話だが、加護野忠男・神戸大学教授の講演を拝聴した際、人事部が果たしてきた役割を評価される一方で、「戦後、人事部が犯した最大の罪は、窓際族を大量に作ってしまったことだ」と指摘しておられたのを覚えている。
欧米にキャッチアップすることを目指して一直線の成長を実現しようとした時代。そのための人材の調達・管理において、人事部の果たした役割は大きかった。が、そのような時代が終わり、企業が社会・経済の速く大きな環境変化に対応しなければならなくなった時、気が付けば通用する人材は多くなかった、人事部は次世代を見すえた人材育成を怠ってきたのではないか、という指摘である。
窓際族はどのようにして生まれるのか。さまざまな研究結果はあると思うが、基本的には、同じ分野において、同じ知識・技術を用いて、同じような安定した環境で働くことができた期間が長すぎたことが原因だろう。その結果、知識や技術の陳腐化・劣化が生じ、視野の狭さや視点の低さが放置され、変化が求められる組織において必要性の低い人材となってしまう。
得てしてこのようなテーマは、本人たちの資質や努力の問題、あるいは“世代論”にされてしまうが、それは違うし解決にもならない。刺激も気付きも学びもない環境に、長期間置き続けた経営であり、人事部に責任ありととらえるべきだろうと思う。
人事部はこれからも窓際族を作り続けるのだろうか。それは、どんな企業の人事部だって、人件費の観点からも、組織運営の観点からも避けたいはずである。
しかし、そのために何をすべきか、いまだ明確でない。今の窓際族を、どう処遇するかで精一杯に見える。このままいけば、次々に生まれてくる窓際族の処遇にいつまでも悩み続けなければならないのは明らかだろう。窓際族を生んできた人事部の組織人事マネジメントを反省し、改善せねばならない。これは、人事部の急務かつ最優先の課題だと思う。(川口雅裕)
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