旅客機の整備の話。“空の安全”はどう守られている?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2011年08月19日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

クルマの「車検」に当たるC整備

 エアラインや機種によっても異なるが、A整備は飛行時間で300〜500時間(または約1カ月)ごとに行われる。通常はその日のフライトが終わったあとにドック入りし、10人程度の人員で作業を分担。エンジン、フラップ、ランディングギア、ブレーキなどの重要部品のチェックと、オイルなどの補充・交換、各部の清掃などが主な作業項目だ。整備に要する時間は8時間程度で、翌朝には作業を終えてハンガーアウトする。成田空港で働くあるベテラン整備士は、私のインタビューに答えてこう話してくれた。

「深夜から早朝にかけての徹夜作業を終え、翌朝の一番機を送り出すときの気持ちは、言葉では例えようがありません。身体はみんなくたくたですが、整備に当たったどのスタッフの顔も充実感に満たされています」

飛行機と空と旅 深夜にドック入りした機体は翌朝に作業を終えてハンガーアウト

 一方、飛行時間で4000〜6000時間、ほぼ1年から1年半に1回実施されるのがC整備である。C整備では機体各部のパネルが取り外され、細部にわたって入念な点検作業が進められる。ハンガーインからハンガーアウトまで最低でも1週間から10日を必要とするC整備は、車でいう「車検整備」に当たると考えていいだろう。

M整備で新品同様にリフレッシュ

 そして旅客機の整備の中でも最も多くの時間と労力をかけるのが、M整備だ。これは4〜5年に1回、約1カ月かけて進められる。骨組みがむき出しになるまで機体が分解されるほか、塗装もすべて剥がされ、構造的な点検や部品の交換、再塗装などを実施。M整備を終えた機体は、まるで新品同様にリフレッシュされる。

 旅客機はまた、こうした機体の定期整備のほか、エンジンなどの装備品にもそれぞれ定期整備や定期交換が義務づけられている。取り外されたエンジンなどの部品は「ショップ」と呼ばれる専門のメンテナンスセンターに搬入。そこで分解・修理・再組み立てされ、生まれ変わる。

飛行機と空と旅 骨組みがむき出しになるまで機体を分解して点検・修理するM整備

 重要部品であるエンジンのオーバーホールや大掛かりなM整備までをすべて自社で行うエアラインは最近少なくなり、大手エアラインでも中国やシンガポール、ドイツなどの航空機メンテナンス専門会社に委託するようになった。整備を外注しているエアラインでは、戻ってきたエンジンや機体がきちんと整備されているかどうかの入念なチェックが必要なのは言うまでもない。空の安全を守るために、各社とも二重、三重のチェック体制をいかに構築していくかが重要テーマになっている。

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